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クリニック向け健診システムを活用し地域のかかりつけ医機能を担う総合診療クリニックを目指す[クリニックアップグレード計画 〈システム編〉(47)]

No.5217 (2024年04月20日発行) P.14

登録日: 2024-04-18

最終更新日: 2024-04-17

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2024年度診療報酬改定では、外来分野で「かかりつけ医機能の見直し」がトピックとなり、25年4月にはかかりつけ医機能報告制度の運用が始まるなど地域医療においてかかりつけ医が担う役割の重要性が高まっている。連載第47回は、“昔の町医者”のような地域のかかりつけ医を目指し、クリニック向けの健診システムを活用することで、各種検査を充実させるなど予防医療を含めた総合診療を提供するクリニックの事例を紹介する。

日本医師会はかかりつけ医を「身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義している。神奈川県綾瀬市にあるきくち総合診療クリニックの菊池大和院長は、具合が悪くなったり、けがをしたりしたときに地域住民にとって医療の入り口となる「かかりつけ医」を目指し、総合診療を提供するクリニックを2017年に開業した。イメージするのは“昔の町医者”の姿だ。

「昔の開業医の先生は体のことなら何でも診てくれました。医療が高度化するにつれ、専門分野に特化したクリニックが増えましたが、私は専門に囚われず頭から足先まで診て悪いところを見つけるというのが本当のかかりつけ医だと考えています。高齢者は複数の疾患を抱えているので、1人の医師が責任を持って相談に乗り、治療を行うことが大切になります。当院の名称は総合診療クリニックですが、本当は『何でもクリニック』にするつもりでした。真のかかりつけ医を目指し、地域医療に貢献すべく日々診療に取り組んでいます」

「一人でも多くの命をやさしく包み込む医療」を

菊池さんは福島県立医大を卒業後、ナショナルセンターの呼吸器外科、神奈川県内の総合病院の外科、救急センター、座間総合病院では総合診療に従事するなどのキャリアを重ねてきた。開業に当たり「病気を診て、人を診て、一人でも多くの命をやさしく包み込む医療を提供する」ことをクリニックの基本理念に掲げ、総合診療や救急診療を通じて、地域医療に最大限に貢献することを目指している。

同院の特長の1つが、一般の保険診療に加え、菊池さんの予防医療を重視する姿勢からMRI、CTなど充実した検査機器を揃え、脳ドックやがん検診などの各種検査がクリニックで受けられること。検査に対するハードルを下げるため、検査にかかる費用を都内の医療機関に比べ安い価格に設定。受診頻度と受診率の向上を促している。

結果報告書作成の自由度が高い健診システム

都内からも検査を目的に受診者が訪れるという同院のオペレーションにおいて、要となるのが電子カルテやPACSなどと連携した健診システムだ。同院が導入しているのが、ITソリューションサービスを手掛けるテクノアが開発・販売する総合健診支援システム「iD-Heart(アイディハート)」(https://www.id-heart.com)。

テクノアは1990年代から医療機関へオリジナルの健診システムを提供してきた、この分野のパイオニア的存在。2001年には小規模医療機関の健診業務の効率化を図る仕組みとして初代「iD-Heart」を発売し、特定健診への対応など様々なブラッシュアップを続け、現在では800を超える医療機関に導入実績がある。

パッケージソフトであるiD-Heartは、クリニックでの健診業務を運用する上で十分な機能を搭載していることが特長。マスタ設定や使用する帳票の登録も手間がかからず、医療機関の作業負担が少ないため、初期投資額を抑えながら早期立ち上げを実現できる点もメリットといえる。また、約30年にわたりシステムの改良を重ねてきたため、便利な機能や業務効率化ノウハウも充実。法改正にも対応、ローコストでの運用が可能だ。

同院では、2021年4月MRI装置導入時にiD-Heartを導入。院内では、利用者の予約・受付、領収書の発行や人間ドックの結果報告書作成、住所ラベルの作成、売り上げの集計などに活用している。

iD-Heartの使い勝手や導入した効果について菊池さんはこう語る。

「導入時に他社システムと比較した際、テクノアさんのシステムは結果報告書などの帳票作成の自由度が高く、当院独自の結果報告書を作れる点やレセコンや電子カルテ、検体検査、PACSなどの院内システムとスムーズに連携できる点が、当院での導入の決め手になりました。導入コストに関しても、他社に比べお得感のある価格でした。主に診療放射線技師や看護師などスタッフが実際に活用していますが、検査画像を高画質で結果報告書に貼り付けることができ、とても使いやすく、健診業務を支えるシステムとなっています。今まで手書きで行っていた採血結果に関しても、自動取り込み・数値による自動所見入力機能もあるため、検査結果間違いのリスクもなく、スタッフの負担が軽減していると実感できます」

がん検診の受診率向上に取り組みたい

菊池さんの献身的な診療やコロナ禍におけるいち早い発熱外来の設置など、かかりつけ医としての評判が広まり集患は順調で、4月にはリハビリテーションルームを設置。予防を含めた地域住民の健康管理を行うためクリニックを大きく拡張する。

「開業して意外だったのは、40代、50代という現役世代の方が多くがん検診を受けてくれたことです。日本はがん検診の受診率が欧米の主要国の半分程度と低く、早期の肺がんなどは自治体の実施する無料検診のX線検査ではなかなか発見することはできません。大切なのは普段診療をしているかかりつけ医がこうした異常に気づいてあげること。安心して検査をしてもらい、早期発見・早期治療につなげることができるよう、これまで以上に総合的な医療を提供していきたいと考えています」(菊池さん)

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