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【識者の眼】「第8次医療計画における『在宅救急医療』の重要性と日本在宅救急医学会」小豆畑丈夫

No.5183 (2023年08月26日発行) P.62

小豆畑丈夫 (青燈会小豆畑病院理事長・病院長)

登録日: 2023-08-07

最終更新日: 2023-08-07

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一般社団法人日本在宅救急医学会は、2010年代からの在宅医療の充実化が求められる中で生まれた新しい医学会である。17年に日本在宅救急研究会として発足し、翌18年に一般社団法人の医学会として本格的な活動を開始した。学会発足の趣意は「“在宅医療に関わるスタッフ”と“救急医療に関わるスタッフ”が同じテーブルについて、在宅医療を受ける患者の本当の良き医療の構築を目標とする」というものであった。この趣意ができた背景には、在宅患者が急変したときに病院入院が困難であるという問題意識が関係者にあったことがある。この問題を解決するためには在宅医療と救急医療が歩み寄り、お互いのスタッフが話し合い、それぞれの欠点を補い合うことが必要なのは明白であった。しかし、両者の間には医療の理想像に大きな乖離があり、話し合うことがほとんどなかったのである。稀に話し合う場所があったとしても、お互いの主張がねじれて交錯するばかりであった。

当学会設立の経緯となる研究がある。茨城県で私たちが行った「在宅医療と救急医療の一つの病院連携」である。地域の在宅医療専門クリニックと救急病院の医師が、一つの医療機関にいるような緻密な関係を構築することで始まった医療連携である。その結果、在宅医療を受けている患者の容態悪化時、状態が深刻になる前に病院における救急医療受診が可能になり、患者の生存転帰や在宅復帰率が改善したという内容である1)

24年から第8次医療計画が始まることが発表されている。その中の在宅医療体制に関しては、17年に厚生労働省から公表された「在宅医療の体制構築における指針」に沿って改変が進むことが最近報告されている。それは、地域自治体には「在宅療養者の病状の急変時における往診や訪問看護の体制及び入院病床の確保」が義務づけられ(今までは努力義務だった)、それに対応する病院の指定を進めるという内容である。

この第8次医療計画の在宅医療体制の方針は、15年に日本在宅救急医学会が掲げた学会発足の趣意とその目的を同じにすると考える。私は、これからの日本の医療において「在宅医療と病院(救急)医療をシームレスに患者さんに提供する」ことは必須のことと考えている。日本在宅救急医学会が担う役割と責任は、これから更に重くなると考える。

【文献】

1)小豆畑丈夫:在宅医療の真実, 光文社, 2021, p204-40.

小豆畑丈夫(青燈会小豆畑病院理事長・病院長)[医療と制度④]

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