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経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)の適応と限界について

No.5177 (2023年07月15日発行) P.55

山下 勝 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野教授)

欠畑誠治 (太田総合病院中耳内視鏡手術センター センター長)

登録日: 2023-07-17

最終更新日: 2023-07-12

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  • 従来の耳後部切開による顕微鏡下耳科手術に対して,近年,低侵襲治療としての経外耳道的内視鏡下耳科手術(transcanal endoscopic ear surgery:TEES)が行われてきています。その適応と限界についてご教示下さい。
    太田総合病院中耳内視鏡手術センター・欠畑誠治先生にご解説をお願いいたします。

    【質問者】山下 勝 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野教授


    【回答】

    【TEESは様々な中耳疾患に適応があり,片手操作による限界は克服できる】

    TEESでは外耳道をアプローチルートとして病変にアクセスし,最小限の骨削開で,様々な中耳疾患に適応があります。さらに,powered instrumentsの利用により,TEESの適応は拡大しました(powered TEES)。

    (1)TEESの適応

    ①慢性中耳炎,鼓室硬化症

    外耳道の彎曲などのため,顕微鏡では外耳道から穿孔縁が明視下に置けない症例が20%程度存在しますが,そのような症例でもTEESでは広角な視野で明視下に鼓室形成術ができます。鼓室硬化症で耳小骨可動性が不良の場合,最小限のscutumの削開でキヌタ骨の摘出ができ,鼓室形成術Ⅲcが可能です。

    ②中耳真珠腫

    これまで顕微鏡下での様々な術式が考案されてきましたが,遺残性再発・再形成性再発ともに高い再発率が問題となっています。TEESでは,死角を制御することで遺残性再発をなくし,換気ルートの回復と,乳突腔粘膜の温存によりガス交換能を回復することで,真珠腫の再形成を予防することをめざしています。片手操作で骨削開と洗浄・吸引が同時にできる超音波手術器や,狭い術野での使用に適したカーブバーなどのpowered instrumentsを使用することで,TEESの適応範囲が拡大されています。

    小児の先天性真珠腫では,inferiorly based flapを上げることで,発生母地である鼓膜張筋腱やサジ状突起を明視下に置いて,確実な摘出ができます。

    ③中耳奇形

    耳小骨離断や固着を呈する中耳奇形は,TEESの良い適応です。外耳道が狭い小児例でも2.7mm径の内視鏡を用いることで,ほとんどの症例で鼓室形成術が実施可能です。

    ④外傷性耳疾患

    鼓膜穿孔から耳小骨離断,外リンパ瘻まで適応となります。

    ⑤耳硬化症

    外耳道後上壁の必要最小限の骨削開で,all teflonのピストンを用いてFischのreversed procedureでstapedotomyを行い,良好な聴力改善を得ています。

    ⑥外リンパ瘻

    両内耳窓を明視下に置いて閉鎖が可能です。

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