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急性副鼻腔炎(成人)[私の治療]

No.5193 (2023年11月04日発行) P.51

月舘利治 (JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科主任部長)

登録日: 2023-11-02

最終更新日: 2023-10-31

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  • 急性副鼻腔炎は,鼻副鼻腔の急性感染症(発症から4週以内)であり,鼻閉,鼻漏,後鼻漏,咳嗽のほかに,頭痛,顔面痛,顔面圧迫感,嗅覚低下などの症状を呈する疾患である。上気道ウイルス感染が発端となることが多いが,数日後には細菌感染に移行すると言われている。主要起炎菌は,肺炎球菌,インフルエンザ菌,モラクセラ・カタラーリスであり,治療にあたってはこれらに対する抗菌薬を選択する。

    ▶診断のポイント

    臨床症状,鼻腔所見,画像検査により診断し,スコアリングシステムで重症度を評価する1)。スコアリングは,臨床症状として「鼻漏」および「顔面痛・前頭部痛」の2項目につき,それぞれ「なし」(0点),「少量(時々鼻をかむ)/軽度(がまんできる)」(1点),「中等量以上(頻繁に鼻をかむ)/中等度以上(鎮痛薬が必要)」(2点)で,鼻腔所見として「鼻汁・後鼻漏」の1項目につき,「なし,あるいは漿液性」(0点),「粘膿性少量」(2点),「中等量以上」(4点)で評価し,合計点数が1~3点を軽症,4~6点を中等症,7~8点を重症と分類する。

    副鼻腔の画像診断としては,単純X線検査は得られる情報量がきわめて少ないため,CT検査を選択することになるが,診断に必ずしも必要というわけではなく,鼻内内視鏡所見の評価を優先した上で行うことが望ましいとされている。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    初期のウイルス性副鼻腔炎の場合は軽症であり,抗菌薬投与を必要とせずに自然治癒していくこともある。しかし,細菌性副鼻腔炎に移行した場合は,症状が中等症,重症へと増悪していくため,早期の適切な抗菌薬投与が必要となる。したがって,重症度分類に応じた治療アルゴリズムに沿って治療することが推奨されている1)

    治療の原則としては,①ウイルス性が疑われる初期(発症後数日)の軽症では抗菌薬を投与しない,②抗菌薬を投与する場合は細菌培養検査を行い,ペニシリン系抗菌薬を第一選択とする,③常用量で改善しない場合および中等症以降は,細菌培養検査結果を参考に抗菌薬の高用量投与(1.5~2倍量)や抗菌薬の変更を行う,④鼻性眼窩内および頭蓋内合併症が疑われるときは画像検査により早急な評価を行う,などが挙げられる。

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