喉頭肉芽腫症(laryngeal granuloma)は,咽喉頭逆流症(laryngopharyngeal reflux disease:LPRD)によって引き起こされる喉頭の肉芽性病変である。
喉頭内視鏡検査にて,声帯後方付近の表面円滑な腫瘤を認める。また,胃酸逆流(gastroesophageal reflux:GER)を疑う自覚症状の有無(胸焼けや呑酸など)を問診する。
GERに伴う咽喉頭領域の症状や炎症所見はLPRDとして扱われ1),その一症状として喉頭肉芽腫は挙げられる。ただしLPRD以外に,習慣的な大声発声などの後に発症する接触性肉芽腫や,気管挿管後に発症する挿管後肉芽腫もあるが,これらもLPRDが関わっている可能性は否定できない2)。
胃からの逆流物は披裂部後方の食道入口部を経由して喉頭内に達するため,喉頭内視鏡検査では声帯後方やその近傍の披裂軟骨付近などに腫瘤を確認することが多い。症状としては嗄声やのどの違和感,咳嗽で受診されることが多いものの,無症状の場合もあり,健康診断の際,上部消化管内視鏡検査にて発見される例もある。患者自身から診察時にLPRDを疑う症状を訴えない例も少なくないため,問診が重要である。具体的には,胸焼けや呑酸,のどの違和感(のどのつまった感じなど)や慢性的な咳嗽といったGER時の症状の有無,脂肪分の多い食事が多くないか・アルコールの有無といった飲食の状況,飲食後の臥床の状況(飲食後にすぐに臥床するかどうかなど)の確認などが挙げられる。また,これらをまとめた問診票もいくつか出されているため,問診票の活用も診察上有用である。
診断は,喉頭内視鏡検査〔通常光・狭帯域光観察(NBI)〕で観察し,腫瘤の位置や性状・大きさを確認しつつ,組織生検を行う。また,同時に喉頭内視鏡で後交連や披裂部の浮腫状変化,粘膜炎といったLPRDを疑う所見にも留意する。
治療は,一般的に切除をしても再発しやすい疾患のため,薬物療法が選択される。ただし,気道に関わるような大きさの肉芽や,悪性疾患の併存が疑われるような症例は喉頭微細手術を行う。
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