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【識者の眼】「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」川村英樹

No.5170 (2023年05月27日発行) P.59

川村英樹 (鹿児島大学病院感染制御部特例准教授)

登録日: 2023-05-16

最終更新日: 2023-05-16

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応は感染拡大防止と社会経済活動の両立を図ることが方針となり、5月8日より感染症法上2類相当の扱いから5類感染症としての扱いに見直された。医療機関には日常診療との共存を図るため、効率的・効果的な対策に切り替えていくことも求められている。

社会はCOVID-19の今後の拡大に対して楽観的に考えているようにみえる。しかしながら、感染拡大がこれまでと同様に今後も発生しうることは当然懸念される。日本環境感染学会から4月28日に、5類変更後も感染拡大の可能性も踏まえて、面会・外来・入院や職員の対応について各医療機関は必要な感染対策を維持することを提言する「新型コロナウイルス感染症の5類移行後の医療機関の対応について」が発出されている。

これまでCOVID-19に未対応、または自施設内での感染例発生のみに対応してきた医療機関や介護施設においては、まだまだCOVID-19診療に対し積極的に携わるという姿勢ではないところも多い。施設内で感染例が発生することに対する恐怖、施設の機能低下に対する懸念の背景には、陽性者との単なる空間共有で一気にウイルスが伝播・拡大するといった、COVID-19の正しい認識が十分ではない点もみられる。この状況では、今後も医療機関・介護施設での感染拡大や医療ひっ迫は起こりうると悲観的に計画せざるをえない。ポイントを抑えた対策を実施しつつ積極的に対応するためには、まだまだ取り組むべき課題は多い。

COVID-19に限らず、自身や患者は伝播しうる病原体を保有しているかもしれないと考え、病原体の検出の有無にかかわらず常に感染対策に取り組む姿勢、すなわち標準予防策をしっかり行うことが、医療機関・介護施設における感染対策の基本である。「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」は本学の名誉博士である故稲盛和夫氏の言葉である。COVID-19への対応は、標準予防策を強化することで医療・介護施設全体の感染対策の向上につながると、楽観的に自施設・地域の感染対策に取り組んでいきたい。

川村英樹(鹿児島大学病院感染制御部特例准教授)[新型コロナウイルス感染症][標準予防策]敗血症の最新トピックス

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