厚生労働省が新型コロナの感染症法上の位置づけについて、5月8日に5類に移行することを正式に決定した、と4月27日に報道された1)。専門家による部会で現在の感染状況や変異株の状況などを踏まえ、特段の事情が生じていないことを確認した上での決定とある。法律上の扱いの変化は事実上のパンデミック終了宣言とも言え、平時に向けて大きく一歩踏み出したということになる。同時に、今後の対応の変化には注視する必要がある。
国民の最も関心が高いと思われる医療体制については、従来の医療機関の限定が外されて幅広い対応となり、入院調整などで行政の強い関与がなくなるという大きな変化がある。病院の9割が対応し、最大で5万8000人の入院受け入れを確保する旨の報道がなされている。公費の医療費支援も一部で廃止され、インフルエンザ並みの医療費負担となる見通しである。今年度の無料ワクチン接種は継続される。
発生動向の把握も、毎日の発表から定点報告に基づく週1回の報告に代わる見通しだ。都道府県により、現行の方法を踏襲するか定点計測に変更するかの対応が異なることが報道されており、ChatGPTにリストを作成させた結果、青森県、岩手県、山形県、山梨県、長野県、三重県の6県で定点計測に変更とのことであった(三重県以外は未検証)。G7諸国では英国、ドイツ、フランス、イタリアが2〜7日のタイムラグをもっての毎日計上であるのに対し、米国、カナダは週に1度、1週間分合計の報告のみになっている。現時点での人口100万対の新規感染者数は、G7ではフランスが100程度、日本、米国、イタリアで70程度、残りは30未満とコントロールされている。一方で韓国は250程度とやや高い値を示しており微増傾向である2)。
死亡公表については新たな発表はなく、都道府県による日々の報告と公表はやめ、「人口動態統計」で死者数の推移を把握するという4月12日の報道が最新である3)。これまでの「新型コロナ陽性者の死亡」と移行後の「人口動態での死亡総数、死因別死亡」は、本質的に異なるものなので、速報性以外にも連続性や整合性についての懸念がもたれる。
最大の懸念は、変異種の出現などによる感染爆発や死亡急増の発見が遅れることであるが、パンデミック対応をこのまま続けるわけにもいかず、スムーズな移行が重要となる。感染対策も、マスク着用などは個人や事業者の判断にゆだねることになるので、状況に応じた対応が期待される。
【文献】
1)NHK News Web:コロナ「5類」正式決定 5月8日からどうなる?(2023年4月27日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230427/k10014050951000.html
2)Our World in Data:Coronavirus Country Profiles.
https://ourworldindata.org/coronavirus#coronavirus-country-profiles
3)東京新聞Web:〈新型コロナ〉5類移行でどうなる? 都道府県別の死者数公表は終了.(2023年4月12日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/243742
鈴木貞夫(名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授)[定点報告][人口動態統計]