尿路結核とは腎臓,尿管,膀胱で発症する結核症の総称である。肺結核の先行感染後に結核菌が血行性に腎実質へ移行し,乾酪肉芽を形成し,腎結核となる。腎内で組織破壊が進み,結核菌が尿路に播種することで尿管,膀胱結核となる。発症頻度は2019年新規尿路結核登録患者が51例,性器結核が18例で結核総登録患者の0.35%と0.12%にすぎないが,ここ数年横ばいで推移している1)。膀胱癌治療中のBCG感染は0.6%に発症する。
尿路結核に特異的な臨床所見はなく,腎結核では発熱など全身症状や側腹部痛の頻度は低く,腎内に病変が限局している間は尿沈渣異常以外の所見に乏しい。2008年の海外文献では,尿路性器結核にみられる症状と頻度は,蓄尿症状(50.5%),血尿(35.6%),腰痛(34.4%),全身症状(21.9%),無症状(6.4%),また片側の無機能腎(26.9%),腎不全(7.4%),萎縮膀胱(8.6%),精巣上体腫瘤(48.9%)という報告がある2)。
画像診断では,腎の石灰化,腎盂腎杯の虫食い像,拡張変形,腎盂腎杯移行部狭窄,尿管狭窄などの特徴的所見があり,腎盂や融合した空洞内に膿が充満し,さらに膿が流出、石灰化して漆喰腎となる。腎結核が腎外に溢流すると腸腰筋などに直接進展し,後腹膜に冷膿瘍をきたす。膀胱鏡所見は典型的病変として周囲淡紅色の粟粒大円形結節や辺縁が深くえぐれた潰瘍性病変が観察されることもあるが,発赤,粘膜浮腫,膀胱壁肥厚などの非典型的病変や無症状のことも多い。
結核の主たる治療は化学療法である。腎癌疑いで腎摘後に腎結核と判明し,その後の精査で残存する結核性病変が確認されない場合でも,結核の自然史を考慮すれば通常の化学療法を行うべきである。さらに,抗菌化学療法の基本は「感受性のある抗結核薬を必ず複数同時に併用することで薬剤耐性を誘導することなく完遂する」ことにある。
なお,治療期間は尿路結核でも通常の肺結核同様とされ,腎臓に結核病巣があるという理由で延長する必要はない。化学療法を延長しても壊死物質の吸収が促進されるというエビデンスはない。
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