滋賀県では死因究明等推進協議会が中心となって、子供の死亡例調査を行ってきました。これは、子供が死亡する背景を調査し、防ぎ得る死を減らすことを目的としています。本年度からは、厚生労働省のChild Death Reviewモデル事業が実施されましたので、県内でより広い調査が進められています。さて、平成27年から29年の調査結果を見たときに、あることに気づきました。それは、自殺による死者数が交通事故死の2倍以上ということでした。そして、すべて中学生および高校生でした。子供の交通事故の予防対策として、自転車乗員のヘルメット着用や地域の皆様の見守りが行われ、その数は減少しています。しかし、自殺予防対策は遅れているようです。
ここでは、自殺に関して信頼性が高い警察庁の統計をご紹介します。わが国では景気の急落によって平成10年に自殺者が初めて3万人を超え、前年から約8500人増加するという事態が起きました。このとき、20歳未満の自殺者数も前年の469人から720人へと急増しました。以後、全体の自殺者数の変化と20歳未満の自殺者数の変化はほぼ同じでした。しかし、ここ数年の傾向は違います。平成26年から令和元年にかけて自殺者数は2万5427人から2万169人へ減少しているにもかかわらず、20歳未満の自殺者は536人から639人と増えています。平成31年/令和元年には文部科学省も小学生~高校生の自殺者が昭和63年以降最も多かったことを公表し、細かい検証と再発予防の必要性について言及していました。
自殺の原因として最も多いのは健康問題で、背景にある精神疾患などが関係しています。20歳未満の自殺の原因として最も多いのは学校問題で、以下、健康問題と家庭問題が続きます。いじめが原因とされる例もあるようですが、調査でもはっきりしないことが多いそうです。先の文部科学省の調査によると、平成30年に自殺した小学生から高校生332人のうち、原因が明らかになったのが4割で、内訳として家庭問題、親などからの叱責、進路の悩み、いじめと続いていました。しかし、6割は原因が不明でした。子供の自殺は心理的要因が多いと考えられますが、それを明らかにするのが困難なのです。
若い人の多くは日常のコミュニケーション手段としてSNSを利用しています。そこで、厚生労働省は平成30年3月に自殺防止SNS相談事業を開始しました。対面や電話などのコミュニケーションが苦手な人でも安心して相談できる環境を作ることを目的としています。LINE、チャット、Twitterなどで1年間に約2万3000件の相談があったそうですが、43.9%は20歳未満の子供からの相談でした。そして、92.1%は女性からの相談であったそうです。
前記のような取り組みでも、男子からの相談は得られないようです。やはり男性は、弱音を吐けない、恥ずかしいといった気質があるのでしょうか。つい最近、男子高校生が拳銃を用いて自殺するという凄惨な事象が発生しました。学生生徒(特に男子)の気持ちを把握することが、自殺予防に向けた最大の課題のようです。