お知らせ
（5）職業性アナフィラキシーの診かた［特集：職業性アレルギー疾患の診かた］
特定の職場環境に起因する原因や条件によって起こるのが職業性アナフィラキシーである
皮膚・粘膜症状に加えて，呼吸器症状，血圧低下による症状，持続する消化器症状のうちの少なくとも1つが合併する場合に疑う
一般的な原因としては食物，薬物，昆虫による刺咬傷が多いが，職業性アナフィラキシーでは，さらに哺乳類やヘビによる咬傷，ラテックス，化学物質などがある
初期対応は，下肢を挙上するとともに，アドレナリン注射，酸素吸入，補液投与を開始する
エピペン®を処方すべき患者は，①重症のアナフィラキシー歴や喘息がある，②ハチ刺傷など，アレルゲンの回避が困難である，③職業的にアレルゲンへの再曝露がありうる，④原因アレルゲンが特定されていないなどである
1. 症例
1 症例1
31歳男性，職業は木の伐採。
主訴はハチ刺傷後のショック（複数回）。原因アレルゲンはスズメバチ毒，診断根拠は特異的免疫グロブリンE（immunoglobulin E：IgE）抗体（ハチ3種ともクラス4），感作経路はハチ刺傷，喘息歴なし，対処は転職とアドレナリン自己注射（エピペン®）処方。
2 症例2
33歳男性，職業は漁師（15年間）。
主訴は食後の蕁麻疹・呼吸困難・嘔吐と下痢・意識消失。原因アレルゲンはアニサキス（サバ・イカの摂取），診断根拠は特異的IgE抗体（クラス6），感作経路は船上の漁師めしによる経口（あるいは経皮）感作，喘息歴あり，対処は船上での魚介類摂取禁止とエピペン®処方。
3 症例3
50歳男性，職業は食品関連会社（試食担当）。
主訴は蕁麻疹・呼吸困難・嘔吐と下痢。原因アレルゲンはラパス貝，診断根拠はラパス貝のプリックテストと特異的IgE抗体（ホタテとカキが陽性），感作経路は経口感作，喘息歴あり，対処は試食からの貝類・甲殻類・軟体動物除去とエピペン®処方。
