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(3)アレルギー性輸血副作用の診断ツールとしての好塩基球活性化試験の可能性[特集:輸血による副作用の種類と対応]

No.4957 (2019年04月27日発行) P.30

平山文也 (日本赤十字社近畿ブロック血液センター)

登録日: 2019-04-29

最終更新日: 2019-04-24

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輸血による重篤なアレルギー性副作用は年間500~600例が日本赤十字社に報告されているが,輸血と副作用との因果関係は科学的に証明されているわけではない

食物,薬剤,植物等に対するアレルギーにおけるアレルゲンの特定やアレルゲン特異的免疫療法後の寛解状態の推定のために,好塩基球活性化試験が広く利用されている。同試験は,スキンテストやチャレンジテストと異なり副作用がなく安全である

好塩基球活性化試験を用いることにより,輸血とアレルギー性副作用の因果関係,I型アレルギーであるか否か,また場合によっては製剤中のアレルゲンの推定等ができるものと期待されている

免疫抑制状態にあり患者好塩基球を利用できない場合には,第三者の好塩基球を用いた受身好塩基球活性化試験を代替法として用いることができる

1. 輸血副作用の頻度と内訳

アレルギー性副作用は,輸血における副作用の中で最も頻度が高く(1~4%),とりわけ血小板製剤において多い1)2)。日本赤十字社への副作用の報告は実発生例全体のごく一部であるが,報告例の約半数が重篤症例であり,さらにその7~8割がアナフィラキシー,アナフィラキシーショックや血圧低下といったアレルギー性の副作用である。実数としては,年間に500~600例の重篤なアレルギー性副作用が報告されている。

2. アレルギー性輸血副作用に対する従来の検査

日本赤十字社では従来から,トリプターゼ検査と血漿蛋白欠損・血漿蛋白抗体検査の2種類の検査を実施している。いずれも患者血清を用いる検査で,前者はアレルギー担当細胞である肥満細胞と好塩基球のうち主に肥満細胞からその活性化とともに血中に放出されるアレルギーマーカーであるトリプターゼを検出する。患者血清中のトリプターゼが輸血前後で一定以上上昇していればアレルギー性反応と判定されるが,トリプターゼの血中半減期は2時間程度と短いため,発症後早期に採血する必要がある。また,好塩基球が主に作動するアレルギー反応は捉えにくい可能性があり3)4),さらにはたとえ陽性の結果が得られても輸血との因果関係までは推定できないという欠点がある。

後者は,1968年に全血,血漿,またはガンマグロブリン輸血後に重篤なアレルギー性副作用を発症した3人の患者が血漿蛋白の1つであるIgAを欠損していたことが報告され5),その後40あまりの類似症例が報告され,IgA欠損でIgA抗体を保有することがアレルギー性副作用につながると考えられるようになったことに端を発する検査である。わが国を含む東アジアではIgA欠損よりもハプトグロビン欠損の頻度のほうが高く6)7),ハプトグロビン欠損で,抗体を保有する患者におけるアレルギー性輸血副作用発症の症例報告が複数なされ8),ハプトグロビン欠損もIgA欠損と同様にアレルギー性輸血副作用の原因と考えられるに至っている。そのようなリスクのある患者には,血漿成分を洗浄・除去した洗浄製剤やIgAあるいはハプトグロビン欠損献血者由来の血漿製剤が使用されることがわが国を含め世界レベルで一般的となった。

しかし最近,種々の調査報告について公開・未公開を問わず再検討した結果,アレルギー性輸血副作用の発症にIgAが関与しているという医学的根拠は立証できないとする報告がなされ,少なくともIgA欠損に関しては,その関与そのものの正否が論争中である9)

現在,日本赤十字社では,上記2種類の血漿蛋白も含めて合計5種類の血漿蛋白に関して欠損の有無と抗体の保有状態を検査しているが,その意義については今後検証する必要がある。たとえアレルギー性輸血副作用の原因であったとしても,該当する症例は,年間,数例にとどまるため,大半のアレルギー性輸血副作用の原因および輸血との因果関係は現在の検査では明確にできないというのが現状である。

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