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(1)外来で考える連鎖球菌─分類学とA群溶連菌の臨床像[特集:文献を紐解く 溶連菌のこんな話題]

No.4937 (2018年12月08日発行) P.28

山手亮佑 (飯塚病院総合診療科)

登録日: 2018-12-10

最終更新日: 2018-12-05

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連鎖球菌の分類は血液寒天培地での溶血性とLancefield分類で行われている

外来では,主にA群溶血性連鎖球菌(GAS)とS. dysgalactiaeなどのC/G群溶血性連鎖球菌を意識する

GASには様々な臨床徴候がある

1. Lancefield分類を意識した連鎖球菌の分類学:特にA,B,C,G群について1)~4)

連鎖球菌はグラム陽性球菌であり,大部分が通性嫌気性菌である。一般的に口腔,上気道,腸管,皮膚などに存在している。内科外来でも,連鎖球菌関連の感染症に出くわすことも多く,その菌種,病態も様々である。

Streptococcus属の分類学および命名法は複雑である。分類に関しては,第一に血液寒天培地における溶血性を観察する。Brown JHが1919年に血液寒天培地上での連鎖球菌の溶血反応を初めて明らかにした。溶血性によってα(溶血性があるが不完全溶血で緑から褐色調の着色がある),β(完全溶血をしてコロニー周囲が透明になる),γ(溶血性がない)に分類される。α溶血性連鎖球菌で臨床的に重要なものとしては,肺炎の主要起因菌である肺炎球菌(S. pneumoniae)と亜急性細菌性心内膜炎(subacute bacterial endocarditis:SBE)の主要起因菌である口腔内連鎖球菌(S. viridans group)がある。

次に,菌株の抗原性によるLancefield分類を行う。1933年にRebecca C. Lancefield(1895~1981年)は,β溶血性菌株に関連する糖鎖抗原に着目した分類法(Lancefield分類)を考案した。β溶血性連鎖球菌は,Lancefield分類によってA~V群に分別されるが,1つの菌種が複数の群に分類されることもある(S. dysgalactiaeなど)。また,α,γ溶血性を示す非β溶血性連鎖球菌のLancefield分類の有用性は低いとされる。

上記の分類では問題があったため,近年,Streptococcus属の分類が再整理され,Streptococcus属から別属(Enterococcus属,Lactococcus属,Abiotrophia属,Granulicatella属など)へ移行したりとStreptococcus属の分類は混沌としていた。現在,遺伝子解析による分類法が提唱され,1995年には岐阜大学の河村らが16SrRNA遺伝子配列に基づき,pyogenic group(S. pyogenes,S. agalactiae,S. dysgalactiaeが入る),mitis group(SBEの起因菌,S. pneumoniaが入る),anginosus group(主に膿瘍や組織破壊で問題となる菌,S. anginosus,S. constellatus,S. intermedius),salivarius group(SBEの起因菌),bovis group(大腸癌との併発,SBEの原因で問題),mutans group(SBEの起因菌)の6グループに分類している。今回は表現型の特徴としてLancefield分類に焦点を当て,A,B,C,G群に絞って概略を述べる。

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