10数年も前のことになるだろうか。「超音波機器を聴診器のように使いこなすべきである」という話を聞いたことがある。超音波機器は、多くの診療領域において使用されている。しかし、編者が述べているように、肺エコーの歴史は古く60年近くも遡ることができるものの、肺エコーに関するまとまった書籍はなかった。近年の肺エコーの広がりを考えれば、本書はまさに今求められているものである。
本書では、初心者にもわかりやすく肺エコーの基本について多くの図や写真と共に解説されている。電子版の動画も参照すれば、さらに理解しやすくなる。72のクエスチョンに対して、箇条書きにされたポイントと、豊富な図を含む解説、そして描出のコツとピットフォールからなっている。最初の32のクエスチョンは、肺エコーの基本についてのものであり、超音波プローブの当て方や持ち方、最適な描画を得るための調整などについて、初心者にも理解しやすく解説されている。肺エコーは、「聴診のかわりに超音波で聴くにすぎない!」「“ざっくり全体像把握”と“気になる所の詳細観察”、この2段階で考えよう」といった記述を読むと、肺エコーを親しみやすいものに感じられる。欧文の名称も多いが、読み進めるうちに画像や動画の視覚情報と合体して、すんなりと記憶できる。
本書のタイトルは「肺エコー」だが、内容は、肺の病変(肺炎、間質症候群、肺水腫、急性呼吸促迫症候群など)だけでなく、胸壁、肋骨、胸膜(腫瘍や肥厚)、胸腔(気胸、胸水、膿胸)、肺血流の評価にまで及んでいる。エコーを理解するための教育法や、肋間神経ブロックや傍脊柱ブロックに関するコラムや、胸腔穿刺や生検などの治療に関する記載も有用である。
あなたも本書を読めば、早速明日にはエコープローブを胸壁に当てたくなること間違いなしである。