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消えた腫瘤[プラタナス]

No.4931 (2018年10月27日発行) P.3

赤井靖宏 (奈良県立医科大学地域医療学講座教授)

登録日: 2018-10-27

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  • 高齢化が進み、お元気な高齢者を担当することが多くなった。Aさんは当時85歳。腎機能低下で私の外来に通院されるようになった。家族の方が大変献身的で、診察時にいつも1、 2名付き添われる。

    Aさんは内科的疾患を複数お持ちだが、お元気で、いつも歩いて診察室に入られる。心配性で、最近の体調変化をいくつもお話しになる。私はAさんとのお付き合いが長くなるにつれ、多くの訴えに対して傾聴で臨んでいた。

    ある日診察に来られたAさん。いつもと様子が違う。座られたとたん、「先生、これなんでしょう」と左の首筋を触られ、「今まで気付かなかったんですが、2週間ほど前にふと首筋を触って気づいたんです。しこりがあるようなんですが」と話される。触診してみると、確かに1cm大のやや硬めの腫瘤を触知した。痛みはなく、可動性もあまりない。

    Aさんからは、「癌じゃないでしょうね」という問いかけがあり、とりあえず、超音波検査で診てみましょうということで、超音波検査後に再診予約した。超音波で診た腫瘤は写真のように多方向から血流が流入しており、悪性腫瘍の転移の疑いが強いとの診断であった。この結果をAさんとご家族にお話しして、どのように悪性腫瘍の検索を進めるかをおおざっぱにお話ししてその日はお帰りいただいた。Aさん89歳の夏であった。

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