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オールド・ルーキー:フルベストラントのポジション【エストロゲン受容体分解作用によりQOLを低下させずに病勢を安定】

No.4914 (2018年06月30日発行) P.56

荒木和浩 (兵庫医科大学乳腺・内分泌外科准教授)

三好康雄 (兵庫医科大学乳腺・内分泌外科教授)

登録日: 2018-06-30

最終更新日: 2018-11-28

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「オールド・ルーキー」は,メジャーリーグベースボール史上最年長の35歳でデビューしたジム・モリスの実話をもとにした米国映画である。フルベストラントも米国で初めて承認を受けたのは2002年,15年後の17年になり一次治療としてのポジションを獲得した。それは内分泌療法未治療閉経後ホルモン陽性乳癌であり,今までの内分泌療法既治療に加えての適応拡大となる。これまでの一次治療の標準治療はアロマターゼ阻害薬である。副腎から分泌されたアンドロゲンはアロマターゼによりエストロゲンに変換される。アロマターゼは脂肪組織のみならず,乳癌組織内や周囲の脂肪細胞に多く発現している。このエストロゲンが乳癌細胞の増殖に関与しているのは言うまでもない。

多施設共同無作為化二重盲検第3相試験FALC ONでは,内分泌療法未治療閉経後ホルモン陽性進行乳癌患者に対するフルベストラント500mgの有効性と安全性をアナストロゾール1mgと比較検討した。この試験においてフルベストラント群は無増悪生存期間を有意に改善し,病勢進行のリスクを約20%低下(ハザード比:0.797,95%CI;0.637~0.999)した1)。フルベストラントは,アロマターゼ阻害薬にはないエストロゲン受容体を分解する作用を持つ。これが初回治療から可能になったことで,ホルモン療法の特徴であるQOLを低下させずに長期に病勢を安定させることができる。

【文献】

1) Robertson JFR, et al:Lancet. 2016;388(10063): 2997-3005.

【解説】

荒木和浩*1,三好康雄*2  *1兵庫医科大学乳腺・内分泌外科准教授 *2同教授

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