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薬価制度改革に抜け落ちている視点[お茶の水だより]

No.4871 (2017年09月02日発行) P.18

登録日: 2017-08-31

最終更新日: 2017-08-31

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▶8月23日の中央社会保険医療協議会では新薬7成分の薬価収載が承認された。しかしこの中には本来収載されるはずの高脂血症治療薬「パルモディア錠」と末梢性T細胞リンパ腫治療薬「イストダックス点滴静注用」は含まれていなかった。
▶現在、中医協では薬価制度の抜本改革に向けた検討が進んでいるが、「新医薬品の薬価算定プロセス」については今のところ論点に上がっていない。新薬の薬価算定プロセスは、①薬事承認、②製薬企業が薬価収載申請、③薬価算定組織が算定案を検討・通知─という流れで行われる。仮に製薬企業が算定案を不服とした場合は、不服意見書の提出が認められており、それを基に算定組織が2回目の検討を行う。前述の両薬は薬価が折り合わず、申請を取り下げた形になる。
▶収載を1回見送れば、保険診療での処方は3カ月遅れる。一方、製薬企業にとって莫大な開発費をかけた新薬の薬価は命運を左右するもの。新薬の価値が認められず、一定の利益がなければ販売を見合わせるという経営判断も理解はできる。
▶申請取下げで記憶に新しいのは「トルツ」だ。外国平均価格調整で類似薬より高薬価となったことから、厚生労働省が類似薬の使用を推進する留意事項通知を発出。これを受け、販売元企業は申請を取り下げた。その後、外国平均価格調整の対象外となる相場まで為替が変動したタイミングで改めて収載を申請した。薬価は下がったが、企業戦略で収載が遅れることは望ましい状況ではない。
▶薬価制度の抜本改革の基本方針には「医療の質の向上」が謳われている。この視点からすれば、外国平均価格調整など算定方式の見直しだけでなく、算定プロセスの整理も行うべきではないか。

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