従業員50人以上の企業に対し、年1回以上のストレスチェックの実施が義務化されてから、昨年12月で1年が経過した。最近では、電通新入社員の過労自殺認定を機に、長時間労働是正の議論が活発化している。産業保健の現場に精通する福本正勝氏に、ストレスチェック制度の課題と、「働き方改革」による産業医業務への影響について伺った。
外部委託業者(EAP機関)の調査では、ストレスチェック実施企業における受検率(図)は、全業種で平均8割弱程度。もともと産業保健・安全衛生に取り組む意識が高い建設業や製造業、情報通信業は9割程度である一方で、実施時間がとれない医療福祉業などは6割程度となっている。
そもそもの問題としては法令上、労働者にストレスチェックの受検義務がないという課題がある。これによって結果の客観性が低くなっている。ストレスチェックの結果や面接の申出を理由にした労働者への不利益取扱いが禁止されているとはいえ、受検者が上層部の顔色を気にしてわざと良く回答するといった事例はやはり起きてしまっている。
実施時期によって結果が大きく変化するという問題もある。ストレスチェックの実施から、面接を申し出た「高ストレス者」が実際に医師面接を受けるまでは、概ね2カ月くらいの間隔が空く。私も「高ストレス者」を面接してみて、「回答した時はひどかったけど今は大丈夫です」というケースを多数経験している。
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