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痛ましい過労死をゼロにするために [お茶の水だより]

No.4830 (2016年11月19日発行) P.16

登録日: 2016-11-17

最終更新日: 2016-11-16

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▶電通の新入社員の女性が過労自殺した問題に関連し、ツイッターで大きな反響を呼んでいる作品がある。イラストレーターのしおしおしいしおしおさんが実体験を記録した「『死ぬくらいなら辞めれば』ができない理由」と題する漫画だ。ツイッターでは、過労自殺寸前にまで至った状況や周囲のアドバイスで冷静さを取り戻した経験を紹介。「『まだ大丈夫』のうちに判断しないと判断自体ができなくなってしまいます」と呼びかけている。リツイート数は約14万件に上り、多くの人にとって過労死が身近な問題であることが窺える。
▶厚生労働省は昨年、過労死をゼロとするための目標として、 ①週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下(2020年まで)、②年次有給休暇取得率を70%以上(同)、③メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上(17年まで)─の早期達成を打ち出した。
▶現状はどうか。厚労省が先月公表した初の「過労死等防止対策白書」によると、①週労働時間60時間以上の雇用者の割合は8.2%(15年)、②年次有給休暇取得率は、47.6%(14年)、③メンタルヘルス対策に取り組む事業場は60.7%(13年)─という状況で、まだ道半ばだ。
▶労働安全衛生法により昨年12月から労働者が50人以上いる事業所では毎年1回、労働者へのストレスチェック制度が義務化された。これをきっかけに、心身に不調がある人に周囲が気づきやすい職場の環境が整備されることが期待されている。痛ましい過労死を減らし、労働者が健康に働き続けることができるよう、産業衛生活動に携わる医師は、労働者のストレス状況と職場環境の把握に一層努め、職場環境の改善を後押ししたい。

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