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「オプジーボ」特例的に期中引下げ検討へ - 次期改定に向け薬価制度の抜本的見直しに着手 [高額薬剤問題]

No.4815 (2016年08月06日発行) P.10

登録日: 2016-08-06

最終更新日: 2016-10-30

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【概要】高額薬剤を巡る対応の方向性が固まった。中央社会保険医療協議会総会(田辺国昭会長)は7月27日、厚生労働省が示した対応案を了承。がん免疫療法薬「オプジーボ」の薬価について、期中引下げなど特例的対応の検討を行うとともに、薬価制度の抜本的見直しに着手する。


2018年度次期薬価改定に向け、薬価制度の抜本的な見直しの検討が行われる。見直しの主なポイントは、(1)現行制度が想定していない効能・効果の追加などによる大幅な市場規模拡大に対応できる薬価制度の構築、(2)市場規模の極めて大きい薬剤に対する給付の適正化を図る仕組みの構築、(3)医薬品の特性やこれまでの治療にかかる費用との比較を踏まえた対応─の3点。(3)では、当該医薬品が治癒または延命を目的とするかという視点を、どう評価に導入するかがカギとなる。

●GLは患者の選択基準、医師要件など盛り込む
「オプジーボ」(一般名=ニボルマブ)の薬価(用語解説)を巡っては、当面の対応として、年内をメドに引下げを視野に入れた“期中改定”など特例的対応の結論をまとめる。併せて新規作用機序医薬品の最適な使用を進めるためのガイドラインを策定した上で、医療保険上の取り扱いについて検討を行う。
『最適使用推進ガイドライン』の対象は、オプジーボと高コレステロール血症治療薬「レパーサ」(一般名=エボロクマブ)とその類薬。個別医薬品ごとに、(1)使用が最適と考えられる患者の選択基準、(2)適切に使用できる医師・医療機関等の要件─が盛り込まれる。医療保険上の取り扱いとしては、留意事項通知での対応を想定。現在でもオプジーボの使用は添付文書で、「がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師」に限定されるなど、一定の制限を設けているが、添付文書に沿った処方であってもガイドラインの要件を満たさない場合には、レセプトで査定される可能性が出てきた。

●期中改定に診療側は慎重論も
期中改定については、中川俊男委員(日本医師会)が希少がんの治療薬として算出したオプジーボの高薬価が次期改定まで維持される点を問題視し、再算定の必要性を繰り返し訴えてきた。厚労省保険局医療課も特例的対応に「期中改定を含む」との見解を示しており、実現の可能性は高まったといえる。
しかし27日の会合で中川委員は、慎重論を展開。ここ数回の診療報酬改定で、薬価引下げによる財源が医科本体に十分に充当されていない現状を踏まえ、「非常にリスキーで慎重な検討が必要」と指摘した。薬価改定財源の一定部分のみを本体に充当することが規定路線となりつつある中、期中の薬価引下げは医療費の財源確保という観点からするとデメリットの方が大きいとの考えからだ。今後中医協では一刻も早い薬価引下げを求める支払側と期中改定の是非を巡り、激しい議論が展開されることになる。

●用語解説
【オプジーボの薬価】
悪性黒色腫を効能・効果とする画期的新薬として初の有用性加算60%が算定。また、ピーク時の市場規模が470人と小さかったことから20mg15万200円、100mg72万9849円の高薬価で収載された。


【記者の眼】
現行の薬価算定ルールには課題が多い。例えば原価計算の「流通経費」は薬価に関わらず年度ごとに一定額で算出され、オプジーボは4万5953円(100mg)。高薬価を招く要因の1つとなった。こうした不合理なルールが他にもまだあるのではないか。新たな算定方式の設定など、真の抜本的見直しが求められる。(T)

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