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ヒートショックと住環境 【断熱性能の高い住宅は循環器疾患の予防につながる】

No.4811 (2016年07月09日発行) P.52

加藤貴彦 (熊本大学公衆衛生学教授)

登録日: 2016-07-09

最終更新日: 2016-10-29

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「ヒートショック」とは,家の中の急激な温度変化によって血圧や脈拍の変動が起き,失神,心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こすことを言う。これまで,「ヒートショック」という用語は主に建築業界で使われていたが,最近では医療の分野でも知られるようになってきている。
「ヒートショック」が原因と考えられる家庭内の高齢者死亡数は年間1万人以上と言われており,その対策に関する重要性が認識されつつある。2014年より国土交通省は,「スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」をスタートさせた。この事業は,医学と建築学との有機的な連携に基づく,住環境の改善による居住者の健康の推進を目的としている。最近のデータによると,断熱性能の高い住宅では,家の中の温度差が緩和されたことで,入浴時や起床時の血圧の変動が抑えられ,循環器疾患の予防につながることが示唆されている(文献1)。
国民の疾病予防や健康寿命の延伸を目的とした健康政策は,これまで一次予防(生活習慣改善)の啓発が中心であったが,これからは個人の努力を支援することや,未然にリスクを防ぐことを目的とした健康的な環境の提供によるゼロ次予防が大切となる。
生活の基本要件として「衣食住」という言葉があるが,健康の基本要件としては「医食住」が重要であろう。我々が仕事をする職場,そして,家族が暮らす住環境が,健康にとってきわめて重要であることに我々は注意を配る必要がある。

【文献】


1) 伊香賀俊治, 他:日本建築学会学術講演梗概集. 2015, p359-60.

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