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交替制勤務と発がんリスク  【「概日性をみだす交替制勤務」には「発がん性がおそらくある」とIARCが発表】

No.4808 (2016年06月18日発行) P.57

加藤貴彦 (熊本大学公衆衛生学教授)

登録日: 2016-06-18

最終更新日: 2016-10-29

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交替制勤務(シフトワーク)は夜間作業を必要とする労働現場で広く導入され,日本では15~20%の労働者が対象となっている。近年,夜間に光を浴びることによる概日リズムの破綻が様々な健康障害を引き起こすことが明らかになりつつある。最新のメタアナリシスによれば,乳癌の相対危険度1.2(95%CI;1.08~1.33)(文献1),前立腺癌の相対危険度1.24(95%CI;1.05~1.46)(文献2),大腸癌の相対危険度1.32(95%CI;1.12~1.55)(文献3)と報告されている。
2007年,世界保健機関(WHO)の下部組織である国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC)は,「概日性をみだす交替制勤務」による発がん性を5段階評価の中で2番目のGroup 2A(probably:発がん性がおそらくある)に分類すると発表した。この発表を受けてデンマークは,20年以上の交替制勤務従事後,乳癌を発症した女性労働者に対し,労働者災害補償保険による給付を開始した。日本でもIARCの報告を受けて研究が進みつつあり,疫学研究のみならず,実験動物モデルを用いた研究データも蓄積されつつある。現代の社会システムにおいて交替制勤務をなくすことは難しいが,その機序が明らかになれば,労働者の健康リスクを減らすことが可能になると考えられる。

【文献】


1) Jia Y, et al:Cancer Epidemiol. 2013;37(3):197-206.
2) Rao D, et al:Onco Targets Ther. 2015;8:2817-26.
3) Wang X, et al:Oncotarget. 2015;6(28):25046-60.

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