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【識者の眼】「日本の医療に必要な医療面接を考える」竹村洋典

No.5141 (2022年11月05日発行) P.61

竹村洋典 (東京女子医科大学総合診療・総合内科学分野教授)

登録日: 2022-10-05

最終更新日: 2022-10-05

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これまで、身体的疾患の診断には医療面接による「絞り込み」が重要であることが明らかとなった1)2)。すなわち、医療面接の最初には「今日はいかがいたしましたか?」のような自由度が高い質問をした後に、ある程度焦点を絞った質問、たとえば「それはいつからですか」「どのくらいの時間続くのですか」「毎日あるのですか」とか、「どこの部位が痛いのですか」「どんな痛みなんですか、ビリビリとしびれもあるんですか」「温めると楽になりますか」「痛みが同時にある症状はないですか」などの質問をして患者から情報を得る。一方、患者の不安については、自由度の高い質問、たとえば「それはどうしてですか」とか「どうしてそう思われるのですか」のような質問が適している3)

ところで、20〜40代までの日本人の死因の1位は自殺である。三木らによると軽症のうつ病患者がまず行く診療科が内科であると言われており、プライマリケア医が抑うつ状態である患者を見逃すわけにはいかない。しかし我々の研究では、医師のどんな質問にも、患者は自分の抑うつ気分をなかなか医師に語らないことがわかっている3)

メラビアンによると、人間が受ける感情の情報は、50%強が表情などの視覚的情報、40%弱が音声などの聴覚的情報、そして言語的なコミュニケーションによるのは高々10%弱であるという。種の起源で有名なダーウィンによると、その表情などの使い方は、どの国、人種においても同じであるという。したがって、表情や音声によって患者の抑うつ気分などの感情をいち早く認識できるかもしれない。そして、患者が抑うつ状態であることが分かれば、医師はその可能性について留意しつつ診察ができるであろう。

人間の表情は、ほんの1秒以下の動きが各所で時々起こっている。これをマイクロイクスプレッション(微小表情)と呼んでいる。そして顔面の不随意筋の動きである場合は、なかなか止めることができない。マスクは、随意的に動かせる口角の動きが見えないので、かえって真の抑うつ気分がわかりやすいかもしれない。これらの研究がさらに進歩して、自殺などの不幸な出来事がある程度解消できる時代が来るかもしれない。

今後、高度先進技術を用いて医療面接がさらに解明、開発され、より的確に様々な診断ができるようになるであろう。

【文献】

1)Takemura Y, et al:Tohoku J Exp Med. 2007;213:121–7.

2)Takemura Y, et al:Tohoku J Exp Med. 2005;206:151–4.

3)Goto M, et al:Asia Pac Fam Med. 2016;15:2.

竹村洋典(東京女子医科大学総合診療・総合内科学分野教授)[マイクロイクスプレッション]

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