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【識者の眼】「医療現場で考える教育のこと(後編)」小豆畑丈夫

No.5130 (2022年08月20日発行) P.65

小豆畑丈夫 (青燈会小豆畑病院理事長・病院長)

登録日: 2022-07-08

最終更新日: 2022-07-08

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前編では、教育は「学習者のためではなく、教育する私達のためにある」、また「私達が残してしまった宿題を次の世代に託すこと」と思うようになったとお話しました。

では、私達は具体的に何をすればよいのか、私は2つのことを考えています。①我々がどこまでできて、限界はどこまでなのか? 私達が解決できず次の世代に残してしまう宿題は何なのか? を明確に示すこと。②私達の限界を越えようと思ってくれている次の世代を徹底的にサポートすること、です。

①として何ができるか、これにはアイデアがあります。私は、新鮮な感受性を持ち、限界を知らない若い世代に期待しています。彼らの社会を思う気持ちも信頼に足るものだと思っています。したがって、「私達の限界と次の世代に残してしまう問題について、ありのままに彼らに見てもらおう。そうすれば若い世代から“僕達がなんとかしよう”と考えてくれる人達が必ず現れてくれるはずだ。」と考えています。これは、自分の将来を真剣に考え始める高校生くらいの人達を対象にするのがいいのではないかと考えます。そこで、私が会長を務める第6回日本在宅救急医学会学術集会(2022.9.10〜11開催)で、医療職をめざす高校生以上の学生をボランティアとして募集する試み(http://zaitakukyukyu.com/6zaitakukyukyu/gakusei/index.html)を行うことにしました。学生達のために勉強会を開くのではありません。通常の学術集会を行って、ありのままを学生に見てもらいたいのです。「医療のプロが真剣に討論していても、こんなに解決できていない問題があるのか。」ということを肌で感じてほしいのです。学生達は、必ず、そこで何かを感じてくれるはずだと思っています。

②については、まだ、具体的なアイデアがありません。ただ、「教育は私達のためである」という気持ちを持って、私達から学びたいと考えてくれる人達に接していこうと思います。彼らに早く一人前になってもらって、私達が残してしまった宿題に取り組んでもらわなくてはいけないのですから。

以上が、現在の私の教育に対する思いです。私は教育やその方法を専門的に勉強したことがありません。この教育に対する思いは、私が新型コロナに対応し、臨床現場に立ち続けた中で、自然と私の中に生まれてきたものです。私はこの実感を頼りに、次の世代に未来を託していきたいと思います。

小豆畑丈夫(青燈会小豆畑病院理事長・病院長)[医療の正義⑫]

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