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【識者の眼】「外来診断訴訟の高リスク:カメレオンとしての脊椎痛風」徳田安春

No.5106 (2022年03月05日発行) P.58

徳田安春 (群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)

登録日: 2022-02-25

最終更新日: 2022-02-25

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偽痛風がcrowned dens症候群や椎間関節炎を起こすように、痛風も脊椎に病変をもたらす。その場合、痛風以外の疾患とまぎらわしい。手術になり、術後の組織所見から痛風であることが判明することもある。カメレオンとしての痛風にだまされることも診断エラーとして要注意だ。

実際、脊椎に尿酸結晶の沈着病変のケースは多数報告されている。最初の症例は1950年に報告されている1)。結晶沈着病変は、腰椎、頸椎、胸椎、の順にみられる。椎間関節、椎間板、棘間靱帯、黄色靱帯、硬膜外スペース、そして傍脊椎軟部組織にも及ぶことがある2)。変性した骨関節でpHと温度が低いと尿酸結晶の沈着を起こしやすくなると考えられている3)

このように、脊椎痛風は椎間板ヘルニアや脊椎炎のカメレオンとなる。痛風結節は神経根や脊髄、馬尾を圧迫し、神経根障害や脊髄障害、膀胱直腸障害などを引き起こすことがある。不必要な手術が行われたケースも報告されている。

尿酸塩の結晶は放射線を透過するため、X線写真で可視化できない。また、MRIやCTの所見はしばしば非特異的である。そのために、以前は脊椎の手術が最終診断に必要であった。しかし、新しい画像診断としてのデュアルエネルギーCT(DECT)は、脊椎全体の尿酸結晶の沈着病変を検出することができる。神経根や脊髄、馬尾を圧迫するような病変で、脊椎痛風の可能性があればこの検査を考慮してもよいと思われる。椎弓切除術を行わずに、尿酸降下療法等の内科的治療で後に症状が消失したという報告もある4)

【文献】

1)Kersley GD, et al:Ann Rheum Dis. 1950;9(4):282–304.

2)Yoon J-W, et al:Korean J Spine. 2013;10(3):185–8.

3)Hasegawa EM, et al:Rev Bras Reumatol. 2013;53(3):296–302.

4)Adler S, et al:Rheumatology. 2017;56(12):2243–5.

徳田安春(群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)[診断推論]

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