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【識者の眼】「医療ICTのセグメンテーション」土屋淳郎

No.5100 (2022年01月22日発行) P.62

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2022-01-06

最終更新日: 2022-01-06

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医療もICT化が進み、様々なシステムやアプリケーションが用いられるようになったが、利用する医療・介護などの専門職としてはどのようなシステムを用いて、どのように連動していけばよいか、迷ってしまうことも増えてきた印象だ。

そこで、マーケティング分野で用いるSTP分析の手法に準じてセグメンテーションを行い、様々なシステムのポジショニングマップを考えてみた。患者情報の扱いという観点を中心に、横軸はターゲットとなるシステム利用者を考慮し、左側を「医療者側」、右側を「患者側」として、縦軸にはICTの利用場面を考慮し、上側を「データ管理」、下側を「コミュニケーション」とした。

左上のセグメントには医療者側が行うデータ管理に関するシステムがあり、電子カルテやレセコン、HIS/RISなどが含まれる。これらは医療のICT化が以前から行われており、最近では医療機関同士の医療情報共有も進み、地域医療連携システム等も用いられるようになった。このセグメント内の左側が医療機関内での医療情報を取り扱うEMR(electronic medical record)であるのに対し、右側はより患者側に近く、健康情報を取り扱うEHR(electronic health record)であると考えられる。

EHRのさらに右側、つまり右上のセグメントには患者自身が健康情報を管理するPHR(personal health record)に関するシステムがある。スマートフォンで毎日の血圧や体重を管理するアプリなど様々なものがあるが、最近では医療機関でその情報が閲覧できるシステムも増えてきた。

左下のセグメントには医師間のコミュニケーションアプリや多職種連携システムなどがある。多職種連携システムは主に専門職間での情報をやり取りするが、医療情報というよりも患者の生活情報や専門職間のコミュニケーションの意味合いが強く、最近では患者や家族も参加して情報共有が行われるケースも見かけることが多くなった。左上のセグメントにマッピングされるシステムと連動して運用することも増えてきた一方で、これらのセグメントの違いがわからず多職種連携システムの利用を躊躇するケースもある。

右下のセグメントには患者コミュニティサイトなどがあり、右上のセグメントと合わせてPRM(personal & patient relationship management)を構成する。PRMに関しては前回コラム(No.5096)「個人/患者と医療をつなぐICT」 でも述べた通り、患者側が持つ情報を医療側に伝えることも重要になる。

これらのセグメントとその関係性の理解が適切な医療ICTの利用や今後の発展につながることを願いたい。

【文献】

1) 土屋淳郎:医事新報. 2021;5096:62.

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[医療ICT]

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