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【識者の眼】「地域の医療系大学におけるコロナウイルス感染対策」浅香正博

No.5090 (2021年11月13日発行) P.56

浅香正博 (北海道医療大学学長)

登録日: 2021-11-01

最終更新日: 2021-11-01

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北海道医療大学は札幌からJR学園都市線で約45分で到着する。びっしりと住宅街が連なる札幌の北を過ぎ、石狩川を渡ると周りの景色が一大穀倉地帯に変貌し、田畑が地平線の果てまで続いている。学園都市線の終着駅が北海道医療大学駅である。駅から校舎まではシェルターでつながっており、嵐や吹雪の影響を受けずに中に入ることができる。北海道医療大学は薬学部、歯学部、看護福祉学部、心理科学部、リハビリテーション科学部、医療技術学部の6学部から成り、医学部以外はすべて揃っている医療系の総合大学である。

2020年、新型コロナウイルス感染症蔓延のため対面授業ができなくなり、クラブ活動も禁止されて学生生活はストレスの多い窮屈なものとなっていた。ただ2021年よりコロナワクチンがわが国にも導入され、コロナ対策に少し明かりが見えはじめてきた。しかし高齢者優先のワクチン接種であったため、当大学の学生や教職員の順番が来るのは遠い先のことと思われた。ところが、6月に入って、国からワクチン接種の状況を改善するため、接種会場と医療従事者が確保できる企業、大学に対して職域接種を実施するという通知が来て6月21日より開始するという。北海道医療大学にとって願ってもないことであった。即、手を挙げた。会場は当大学の体育館を使用することとして当大学職員総出で2日でワクチン会場をセットした。打ち手の看護師の数が不足しそうなので、歯科医師にも協力を仰ぎ、看護師から歯科医師への筋肉注射の講義と実習を行ってもらい、開始日までに歯科医師90人を確保できた。ワクチンの調剤や管理は薬学部の薬剤師が担当し、問診業務を担う医師については各学部の医師資格を有する教員に参加してもらい、私も参加した。北海道医療大学の特徴である多職種連携が存分に発揮されたことになる。

こうして6月21日より全学を上げてワクチン接種を開始できた。この日から職域接種が可能だったのは北海道では当大学のみであったため、当日は新聞、テレビなどのマスコミの取材が殺到した。9月29日まで夏休み返上でワクチン接種に邁進してくれた教職員には心から感謝をしている。最終的に、北海道医療大学学生、教職員および家族3553名と地域住民2362名に対し、ワクチンの2回接種を行うことができた。このことにより、対面授業の復活やクラブ活動の開始が視野に入り、コロナ前の学生生活に近づいてくれることを願っている。

浅香正博(北海道医療大学学長)[新型コロナウイルス感染症]

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