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【識者の眼】「予防・早期介入がカギであるCOVID-19は敗血症と似ている」狩野謙一

No.5084 (2021年10月02日発行) P.59

狩野謙一 (福井県立病院救命救急センター)

登録日: 2021-09-27

最終更新日: 2021-09-27

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2021年9月現在、日本は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者数が減少傾向を示していますが、依然として第5波の真っ只中にいると思われます。また、第5波は以前と比較して新規感染者数が桁違いに増加を見せ、それに比例して重症患者も多く自宅待機者の死亡の報道も散見されるようになりました。

COVID-19患者の救命を行うためにはどんな介入が必要でしょうか。約1年10カ月ほどで予防・治療法が世界中で研究されてきました。治療法はまだ確立されておりませんが、2021年9月時点で日本では抗ウイルス薬としてレムデシビル、中和抗体薬としてカシリビマブ/イムデビマブ、免疫抑制薬としてステロイドやバリシチニブ、抗凝固薬としてヘパリンを使用する機会が多くなっていると思われます1)。特に重症化リスクの高い方は軽症の時点から使用可能な中和抗体薬の適応となります。中和抗体薬を使用することで入院または死亡を70.4%減少させたデータもあります1)。2回接種し14日経過した方であれば95%発症を抑制できるワクチン2)と合わせて重症化を防ぐ重要な切り札と言えます。

実はこのCOVID-19に対する介入は敗血症のものと似てます。敗血症は感染に伴う生体反応で、全身の臓器障害をきたし重症となります。重症化する前に感染予防のため手指衛生やワクチン接種などを行います。手指衛生は院内での感染症を50%下げることができ、ワクチン接種を行うことで世界で200〜300万人の死亡を減少させている3)と言われています。また、敗血症は早期に認知をして抗菌薬を可及的早期に投与することが「日本版敗血症ガイドライン2020」にも言及されています。

COVID-19も感染に伴うサイトカインストームが重症化の原因なので、重症化する前に手指衛生・マスク着用などの基本的な感染対策、ワクチン接種、軽症の時点での介入が大事であると思われます。

【文献】

1)新型コロナウイルス感染症診療の手引き. 第5.3版.

2)新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第一報). 

   [https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/10614-covid19-55.html

3敗血症.com 関連動画. [https://www.youtube.com/watch?v=b2y7zTe34OQ]

狩野謙一(福井県立病院救命救急センター)[新型コロナウイルス感染症][敗血症の最新トピックス

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