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【識者の眼】「コロナ禍の睡眠障害」山本晴義

No.5080 (2021年09月04日発行) P.60

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)

登録日: 2021-08-26

最終更新日: 2021-08-26

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コロナ禍において、孤独や不安を感じる機会が増えている。先行きの不透明さも拍車をかけていることは否めない。先日発表された、パナソニックが今年6月に全国の成人548人に行った睡眠に関する調査でも、満足度に関しては約66%と7割近くが「全く満足していない」と答えている。これは主に暑さが原因のようだが、約3割の人はコロナ禍の感染不安や外出自粛によるストレスが睡眠の満足度の低下に影響を受けていると答えている。強い心理的ストレスにさらされると、短期的には入眠困難や中途覚醒を生じ、不眠に陥りやすい。

また、年齢と共に睡眠が変化することは周知の事実であるが、健康であっても高齢になると睡眠は浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒も増す。特に定年後、時間に余裕ができたからといって眠くないのに早めに寝床に入ると、なかなか眠れず、寝床に入ってから悶々とするという状況に陥りやすい。高齢になるほど寝床に入っている時間も長いことがわかっている。睡眠時間は短いのに寝床にいる時間は長いとなると、やはり眠れぬままうつらうつらといった時間が長く、睡眠の満足度も低下することが予想される。

このように睡眠の質を下げないために日頃から気を付けることとしては、眠くなったら寝床に入ることと、昼寝を30分以上とらないこと、寝不足気味であっても朝の起床時間を一定に保つこと、昼間は活動性を上げることが大切である。寝酒を習慣にしている方も多いかもしれないが、寝酒は睡眠の質を下げることにつながる。特に、退職や配偶者の死をきっかけに酒量が増す高齢者も多い。寂しいから、することがないからという飲み方は気を付ける必要がある。

孤独や不安感を覚えることも多いと思うが、孤独や不安から人は一生逃げることはできない。ただ、孤立はしないように気を付けることが必要である。孤独は、大勢の人と一緒にいても感じることもあるし、自分の中での感覚であるが、孤立は他者と離れてつながりがない状況である。孤立しないことが大切である。

山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[睡眠障害][コロナ禍][ストレス]

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