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【識者の眼】「外来診断訴訟の高リスク:急性喉頭蓋炎」徳田安春

No.5079 (2021年08月28日発行) P.65

徳田安春 (群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)

登録日: 2021-07-27

最終更新日: 2021-07-27

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インフルエンザ菌b型ワクチン接種が乳幼児に導入されて以来、急性喉頭蓋炎は成人の病気になった。最近では新型コロナウイルス感染症による急性喉頭蓋炎の症例報告もある。頭頸部系の致死的咽頭痛の代表的疾患であり、その他の疾患には扁桃周囲膿瘍、後咽頭膿瘍、レミエール症候群、口底蜂窩織炎がある。扁桃周囲膿瘍に急性喉頭蓋炎が合併することもある。急性喉頭蓋炎の症候には、発熱、咽頭痛、嚥下痛、声の変化、トライポッド姿勢、喉頭圧痛、ストライダー等がある。検査は頸部軟線X線写真、エコーなど。治療は抗菌薬に加え、気道保護が大切であり、耳鼻咽喉科への迅速コンサルトが大事である。

急性喉頭蓋炎の日本の臨床疫学については、北海道の医療施設からのデータがある1)。患者115人のうち、男性65人、女性50人、年齢12〜85歳、年齢中央値45歳であり、冬より夏に多い傾向があった。発症から初診までの期間の中央値は3日で、範囲は1〜14日であった。8人(7%)に糖尿病があった。

入院初日の血液検査では、白血球数の範囲は3400〜2万5350/μLで、中央値は1万350/μL。CRPの範囲は0.01〜23.3mg/dLで、中央値は2.5mg/dLであった。気管切開や輪状甲状間膜切開などが必要となったのは8人(7%)であった。血液検査での高炎症反応(WBC≧2万/μL、CRP≧20mg/dL)は、気道管理と有意に関連していた。

このデータから言えることは、急性喉頭蓋炎は成人に多く、発症から受診までは14日以内である。大部分のケースでは糖尿病などの基礎疾患は認めていないので、生来健康でも起こりうる。炎症反応検査の上昇は上気道閉塞と関連する。しかし、炎症反応も軽度のみの上昇のことが多いので、軽度上昇程度だからといって急性喉頭蓋炎は否定できない。

【文献】

1)Kono M, et al:IJPOL. 2018;01(01):e1-5.

徳田安春(群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)[診断推論]

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