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【識者の眼】「勤労者こころのメール相談、モットーは『一人で悩まず、気軽に相談を』」山本晴義

No.5051 (2021年02月13日発行) P.62

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)

登録日: 2021-01-20

最終更新日: 2021-01-20

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現代はストレス社会といわれ、職場の人間関係、仕事の質や量、会社の将来性や雇用の安定性の問題が労働者の大きなストレスとなっており、労働者の約6割が、自分の仕事や職業生活に関して、不安やストレスを抱えている現状である。労働者の自殺者は、自殺者全体の約3割にあたる6000人台で推移し、その原因の第1位である健康問題の約7〜8割はうつ病などの精神疾患であるとされる。また、精神障害などによる労災認定数も年々増加傾向にある。メンタルヘルス不調などの労働者の休業による損失は、年間1兆円ともいわれ、メンタルヘルス問題は社会全体で取り組む重要課題となっている。こうした背景から、労働者の心の健康の保持増進は労働行政の重要課題と位置づけられ、従来の精神的不健康者の早期発見・早期治療や復職支援に加え、全労働者を対象とした予防的かつ健康支援的なストレス対策の実施が求められてきた。

厚生労働省のメンタルヘルス指針(2006)では、労働者自身が自らの心の健康について理解しストレス予防や軽減あるいはこれに対処する「セルフケア」、管理監督者が職場環境等の改善や労働者に対する相談対応を行う「ラインによるケア」、産業医等事業場内産業保健スタッフ等が支援する「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、事業場外の専門家の活用と支援である「事業場外資源によるケア」の4つのケアによる心の健康対策が、継続的かつ計画的に行われることが重要であるとされている。

横浜労災病院では、「勤労者医療」(働く人の健康と職業生活を守る目的の医療及びそれに関連する行為)を念頭においた政策病院として、1998年に「勤労者メンタルヘルスセンター」を設置し、2000年に電話とメールによる相談業務を開始した。この公的な相談事業は、15年から厚労省のポータルサイト「こころの耳」(https://kokoro.mhlw.go.jpに移行されたが、当院での「勤労者こころのメール相談」(無料:mental-tel@yokohamah.johas.go.jp)は、筆者が一人で24時間以内の返信を原則に、現在も継続している。20年間の累計は13万件になるが、昨年はコロナ禍で1万件を超えた。「一人で悩まず、気軽に相談を」をモットーにしている。

山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[勤労者医療][メンタルヘルス][メール相談]

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