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【識者の眼】「コロナ禍で求められる女性支援」柴田綾子

No.5048 (2021年01月23日発行) P.56

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)

登録日: 2021-01-12

最終更新日: 2021-01-12

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1. メンタルヘルスケア

以前より日本の自殺者数は男性が女性の2倍近く多いのですが、コロナ禍では特に若年女性(40歳以下)の自殺者増加率が高くなっています。自殺原因で1番多いのは健康問題で、このほか貧困/仕事/家庭/学校の問題が原因となりうつ病等を発症し自殺へ至ると報告されています1)。さらに女性は非雇用者数が多く(男性23%、女性56%)、前年度より男性46万人、女性79万人の雇用が減少しています(2020年12月日本総研)。一般社団法人社会的包摂サポートセンターのよりそいホットライン(0120-279-338)やチャット相談窓口(https://comarigoto.jp/)などに加えて、プライマリケア現場でのメンタルヘルスケアを強化する必要があります。

2. 避妊薬へのアクセス向上

国際産婦人科連合(FIGO)では、コロナ禍の予想外の妊娠は女性の心身への大きな負担であり、遠隔診療の推進、出産直後の長期作動型避妊具の挿入、看護師や助産師への権限移譲を提言しています1)。日本でも、低用量ピルや緊急避妊薬は医師免許があれば処方可能です。2020年9月に日本産科婦人科学会は緊急避妊薬のオンライン診療が可能だと発表しました。日本では避妊ピルは自費で1カ月約3000円、緊急避妊薬は約1万円と非常に高価です。避妊や緊急避妊を保険適用にする、経済的困窮者には無料にする等の対応が必要です。

3. ジェンダー格差の解消

コロナ禍で女性の家事・育児が増加し、週に5.2時間も余分に育児を強いられていると報告されています(国連女性機関11月25日)。日本はジェンダー格差指数(男女格差)が悪化しており、2020年は153カ国中121位と後退しました。家事や育児は女性のものとされている現状を改善し、男性も育児・家事の責任者となる社会が必要です。

4. セルフケア能力の育成

医療機関への受診控えによって疾病の発見が遅れる危険性が報告されています。日本対がん協会の調査では、がん検診受診者数は、例年と比較し2020年4月は16%、5月は8%にまで激減し、1年での発見がん数は4000人近く少なくなると報告されています。世界保健機関(WHO)では、セルフケアを推進するガイドラインで、避妊ピルを処方箋不要の薬局提供とすること、HPV/クラミジア/淋菌/梅毒/トリコモナスの自己検査キットの活用を提案しています2)。遠隔診療や薬局での健康管理体制をつくる一方で、国民のセルフケア能力を高める政策が、長期的な女性の健康維持に貢献すると考えます。

【文献】

1)FIGO Committee for Contraception and Family Planning, COVID-19 Contraception and Family Planning. 13th April 2020.

2)WHO consolidated guideline on self-care interventions for health:sexual and reproductive health and rights. 2019.

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[新型コロナウイルス感染症][女性の健康維持]

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