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【識者の眼】「個別指導で返還金を求められる事例─特定疾患療養管理料に注意」工藤弘志

No.5028 (2020年09月05日発行) P.62

工藤弘志 (順心病院サイバーナイフセンターセンター長)

登録日: 2020-07-21

最終更新日: 2020-07-21

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前回(No.5022)、医学管理料の中の特定薬剤治療管理料について述べました。ある薬剤の血中濃度を測定した際、診療報酬明細書(レセプト)に上記管理料を記載するだけでは、レセプト上は測定後の治療計画の要点が診療録に記載されているか否かはわかりませんが、請求されたら、審査支払機関は保険点数分を支払います。しかし個別指導で、この管理料が請求された患者の診療録をチェックし、治療の要点が記載されていない場合は、支払われるべき条件を満たしていない不当請求と判断され、支払われた金額の返還が求められます。当該保険医療機関の管理者が時に「レセプトでは査定されていませんが」と反論されることがありますが、それはレセプトでは診療録の内容まではわからず、支払い条件を満たしているものと判断されているからにすぎません。きわめて稀に、薬剤の血中濃度を測定していないにもかかわらずレセプト上請求している医療機関がありますが、これは不正請求で、悪質なふるまいです。

医学管理料の中で、個別指導において最も指摘する頻度の高いものが特定疾患療養管理料です。これは、高血圧症等、厚生労働大臣が定めた30数種の疾患を対象とし、対象患者に治療計画を立て、それに基づいて服薬や運動、栄養等の療養上の管理を行い、その管理の内容の要点を診療録に記載して初めてこの管理料を請求できます。このようなことは『医科点数表の解釈』等に記載されています。この要点の診療録記載がなされていない保険医療機関が数多く見られます。レセプトでは査定されていませんが、個別指導では支払条件を満たしていない不当請求とみなされ、返還金が要求されます。中には対象疾患以外の患者にも請求している保険医療機関があり、不正請求として返還金を求め、厳重に注意します。このような医療機関の個別指導の結果が、経過観察となる可能性は低く、再指導となる可能性が高いと思います。

工藤弘志(順心病院サイバーナイフセンターセンター長)[保険診療雑感⑨]

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