6月8日現在、日本のCOVID-19による死亡者は900人強である。死亡者の9割が高齢者であり、40歳未満の死亡者は3人という数字は特記すべき事実であろう。100年前のスペイン風邪では主に若年者が命を落としたのと対照的である。「命」という視点から見ると高齢者は若者の100倍以上危険である。COVID-19は高齢者の問題そのものであり、在宅療養や介護施設における課題である。欧州においても死亡者の半数は高齢者施設という国がある。しかしマスコミは学校の休校や夜の街での感染拡大や院内感染を熱心に報じる一方、もっとも苦境に立たされている介護現場をあまり報じない。同じ地域にある介護施設の現状が医療側に共有されていないことは大変残念である。緊急事態宣言が解除され、やや落ち着きを取り戻した今こそ、医療機関だけでなく介護施設におけるCOVID-19対応を練り直すべき時だろう。
札幌市の社会福祉法人が運営する介護老人保健施設「茨戸アカシアハイツ」におけるCOVID-19の集団感染をご存じだろうか。入所者と職員の合計92名が施設内感染し、16名が亡くなられた。感染者を受け入れる病床がひっ迫していたため保健所長が「施設で看取って」という趣旨の指示をしたという。つまり感染が判明しても医療を受けられず家族に会えないまま亡くなっている。介護スタッフはほとんど辞め、残ったスタッフは自家用車に寝泊まりしながら奮闘した。1日2食しか提供できず、まさに野戦病院になった介護施設。ようやく国や北海道が支援に入ったそうだが施設のHPを見ると夜勤の看護師を「一晩8万5000円で急募」とある。アカシアハイツの事例は日本中どこでも起きる可能性がある。