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【識者の眼】「融通無碍・伸縮自在の医師たちに光を」塩尻俊明

No.5016 (2020年06月13日発行) P.58

塩尻俊明 (地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院総合診療内科部長)

登録日: 2020-05-25

最終更新日: 2020-05-25

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地方の地域病院での病院診療は、各科専門医の先生方の御自身の専門領域を超えた診療によって支えられている部分が大きい。当院の隣町にある地域総合病院もその一つである。以前、当院から現在の専攻医にあたる後期研修医と初期研修医を派遣させていただいた時期があり、その病院の先生方の活躍を間近に見る機会があった。

研修医の面倒を見ていただき、お世話になった先生は元々呼吸器内科の専門でいらしたが、御自身の専門領域はもちろん、外来では広く内科全般の新患と再診外来の対応に当たられていた。入院患者においても、広く一般内科疾患の担当をされ、当院の研修医の指導までしていただいた。また、訪問診療においては、筋萎縮性側索硬化症のような神経変性疾患まで診療をされていた。訪問から入院加療が必要になると判断した場合は、ご自身の病棟で内科管理をされ、再び御自身で訪問診療され、患者家族からは厚い信頼を窺い知ることができた。外科の先生方も、手術だけでなく、外科的治療の必要のない消化器疾患の診療や検査に当たられ、当院からの内科疾患の転院にも快く応じていただけた。

タイトルにあげた融通無碍・伸縮自在とは、一つの見方、考え方にとらわれるのではなく、自由自在にものを見、考えを変え、より良く対処し、臨機応変に自分のすがたを変えることもできるということであり、総合診療のありようを例えているように思う。地方の地域総合病院では、救急外来、病院外来、病棟診療が中心ではあるが、時には訪問診療や関連診療所にまで及ぶ診療をこなす各専門医の先生方は、まさに融通無碍・伸縮自在である。総合診療医が注目されて久しいが、まだまだ総合診療を専門とする診療医は、ご存知のとおり全国に行き渡っているとは言いがたいのが、日本の多くの地方の実情かと思う。今回紹介したような先生方によって、これまで地域の総合病院は支えられてきたし、今後も支えていただくためにも、こういった先生方の活躍が広く認知され、光があたり、評価される仕組み作りが必要だと思う。

塩尻俊明(地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院総合診療内科部長)[#総合診療]

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