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エキノコックス症[私の治療]

No.5007 (2020年04月11日発行) P.42

大西健児 (鈴鹿医療科学大学看護学部看護学科教授)

登録日: 2020-04-10

最終更新日: 2020-04-08

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  • ヒトのエキノコックス症(包虫症,echinococcosis,hydatidosis)は条虫の1種であるエキノコックス属の幼虫感染症で,この幼虫を包虫という。成虫は包条虫といい,イヌ科やネコ科動物の小腸に寄生する。ヒトは何らかの経路で虫卵を経口的に摂取して感染する。ヒトの体内では成虫に発育することはなく,幼虫の段階のまま増殖を続ける。イヌ科やネコ科動物は幼虫を保有する中間宿主の哺乳類を摂食することで感染する。エキノコックス症は多包虫症(alveolar echinococcosis,alveolar hydatidosis)と単包虫症(cystic echinococcosis,cystic hydatidosis)にわけられ,多包虫症の原因として多包条虫(Echinococcus multilocularis)の幼虫(これを多包虫という),単包虫症の原因として単包条虫(E. granulosus)の幼虫(これを単包虫という)が原因病原体とされてきた。しかし,最近は単包性の病巣を形成するものは従来のE. granulosus1種類からE. granulosus sensu stricto,E. canadensis遺伝子型G6/G7,E. ortleppiなど複数の種類にわけるようになってきた。
    わが国において,エキノコックス症は全数把握の4類感染症に指定されており,本症を診断した医師には届出義務が課されている。日本では1999年4月~2018年末にエキノコックス症が425例届出され,そのうちの400例(94%)が多包虫症であった1)。単包虫症の届出数は少なく,2010年以降の届出例は海外での感染と考えられている2)。わが国では多包虫症が北海道に常在しており,北海道では重要な人獣共通感染症となっている。北海道では主要中間宿主がネズミ(幼虫である多包虫が寄生),主要終宿主がキツネ(成虫である多包条虫が寄生)で生活環が完成しており,ヒトは偶発的な中間宿主と同様な立場にある。ヒトの多包虫症,単包虫症ともに病巣形成部位は肝臓が最も多く,ついで肺である。単包虫症は周囲を圧迫するように発育するが,多包虫症は小包が多房化し,組織に浸潤するように増殖して病巣を拡大する傾向がある。
    本稿では多包虫症を主体に記述する。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    病巣形成部位により,症状やその出現頻度が異なる。肝包虫症であれば病巣の拡大につれ肝腫大が,さらに肝内の胆管や門脈を圧迫し黄疸や腹水がみられるようになり,肝癌様である。また,病巣を構成する包虫組織の細胞が血流を介し,他の臓器(肺,脳,骨など)に転移巣を形成することがあり,その場合は被転移臓器障害の症状を示すことがある。

    【検査】

    腹部画像検査:肝多包虫症では,病巣は占拠性病変を示し,石灰化を伴うことがある。病巣が大きくなるにつれ,中心部が壊死に陥りCT検査で低吸収域を呈するようになる。単包虫症では水様成分で満たされた円形の囊胞を示すことが多く,時間の経過とともに周囲を圧迫するような囊胞が観察される。囊胞の中にさらに小囊胞を複数個認めることもある。

    抗体検査:血清の抗体測定を行い,陽性であればエキノコックス症の可能性が高くなる。

    【診断】

    症状,生活歴(居住歴),画像検査所見,血清抗体価を総合して診断する。手術で病巣を摘出すれば,病理検査で診断が確定できる。

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