【幅広い視点を持った産業医の育成】
2017年4月より,社会医学系の14学会・団体で構成される社会医学系専門医協会による社会医学系専門医制度が開始された。このことに伴い,社会医学系の専門医制度として運用されていた日本産業衛生学会の産業衛生専門医制度はサブスペシャリティ領域として取り扱われることとなった。社会医学系専門医の認定は既に移行期間が終わっているが,産業衛生専門医制度はいわゆる2階建て部分に当たるため,この受験資格要件に社会医学系専門医の取得が必要となるのは20年度以降となる。
もともと産業衛生専門医制度では指導医のもとで3年以上の産業医実務研修が求められていたが,今後は社会医学系専門医資格を持っている場合,必要な実務研修期間は最短で1年となる。その分,社会医学系領域の関連項目を体系的かつ網羅的に研修することになるため,幅広い視点を持って職域の課題を解決する人材を育成できると思われる。なお,臨床系の基本領域専門医を取得している医師についても,要件が異なるものの産業衛生専門医を取得できる。したがって,臨床の経験を活かして産業保健の専門性を高めることは可能だが,臨床系基本領域専門医の資格維持要件を満たしつつ産業医活動を行う必要がある。
産業医の実務能力は経験する事業場の業種・業態により得意分野が異なるが,2段階の研修プログラムにより,さらに普遍性のある力を養うことが期待される。
【参考】
▶ 社会医学系専門医協会. [http://shakai-senmon-i.umin.jp/]
【解説】
佐藤博貴,上島通浩* 名古屋市立大学環境労働衛生学 *教授