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【シリーズ・製薬企業はどう変わろうとしているのか─各社のキーパーソンに聞く(10)〈ギリアド・サイエンシズ〉】私たちを革新的な医薬品を一緒に提供できるパートナーと考えてほしい

No.4948 (2019年02月23日発行) P.14

登録日: 2019-02-21

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米国を拠点とするバイオファーマ企業ギリアド・サイエンシズ(以下「ギリアド」)。2012年に日本に進出し、C型肝炎領域で「ハーボニー」「ソバルディ」と画期的治療薬を次々に発売。今年1月には、治療選択肢がほぼないといわれている非代償性肝硬変を伴うC型肝炎患者に希望をもたらす「エプクルーサ」の製造販売承認を取得し、国内の肝炎治療はさらに大きく前進しようとしている。高額薬剤の議論を呼び起こしながら革新的新薬創出のチャレンジを続けるギリアドの日本法人社長ルーク・ハーマンス氏に、薬価を巡る議論への対応、今後の戦略を聞いた。

HTAはイノベーション促進が前提

─C型肝炎治療薬「ハーボニー」「ソバルディ」は患者に大きな恩恵をもたらす一方で、高額薬剤の議論を呼び、2016年度の薬価改定で30%超の特例的な引下げが行われました。現在も中央社会保険医療協議会では費用対効果評価を含め薬価制度の議論が進められ、医療現場にはリーズナブルな薬価を求める声が根強くありますが、こうした薬価を巡る議論をどう受け止めていますか。

ハーマンス 現在、日本政府内では費用対効果評価の制度化をはじめHTA(医療技術評価)の議論が進められています。私たちも議論をサポートするため必要な資料を提供していますが、それはあくまでも、HTAのシステムをイノベーションを促進するものにする、というのが前提条件です。
「ハーボニー」「ソバルディ」は、当初設定された価格から薬価が大幅に切り下げられましたが、2015年の発売以降、日本の臨床医の先生方のご努力もあり、15万人超の患者に根治につながる治療を提供してきました。これはまさに薬の持つ価値を意味しています。このことを忘れてはならないと思います。

─最近承認された「エプクルーサ配合錠」にも医療現場や患者から大きな期待が寄せられています。

ハーマンス 「エプクルーサ」は、非代償性肝硬変を伴うC型肝炎とDAA(直接作用型抗ウイルス療法)治療不成功のC型肝炎という2つの適応症が認められました。2つの適応取得は、日本の多くのキーオピニオンリーダーの先生方、治験責任医師の先生方の協力のたまものと思っています。
非代償性肝硬変を伴うC型肝炎は、いまのところ肝移植以外に治療の手段がなく、重症の場合は死の危険にさらされます。そのような難治性の重篤な疾患であるにもかかわらず、「エプクルーサ」は日本人患者を対象とした第3相臨床試験で92%という高い著効率(SVR12)が示されました。発売に当たっては、疾患啓発からスタートし、医療従事者の皆様に非代償性肝硬変とはどのような疾患かをご理解いただいて、正しい診断、一般医から専門医への紹介、治療が行われるように促していきたいと思っています。

信頼関係培うためコンプライアンスを重視

─革新的な新薬だからこそ正確な情報提供が重要になると思いますが、MR(医薬情報担当者)などの情報提供活動ではどこに重点を置いていますか。

ハーマンス 医療従事者とのコミュニケーションにおいては、信頼関係を醸成するために何よりもコンプライアンスを重視しています。ある業界で成功するためには一緒に仕事をするパートナー、製薬会社の場合は医療従事者の方々の信頼を得ることが不可欠です。
ギリアドはグローバル全体で患者団体とのコミュニケーションも拡充する方向に向かっています。患者がどのような疾患で苦しみ、どのようなアンメットメディカルニーズを持っているかを理解することは製薬会社にとって最もベーシックなことだと考えています。

HIV・炎症疾患も重点領域に

─昨年の社長就任後の会見で肝疾患以外の領域にもチャレンジしていきたいという話をされていましたが、新薬開発の戦略をあらためてお聞かせください。

ハーマンス C型肝炎に関しては「エプクルーサ」がジグソーパズルの最後のピースで、これでほぼ治療を整えることができると思っています。B型肝炎についても現在様々な共同研究を進めており、いつの日か治癒できる時代を迎えたいと考えています。
肝疾患領域の次の課題としては、日本でも重要な問題となっているNASH(非アルコール性脂肪肝炎)があります。現在、日本の施設も含めてASK1阻害薬Selonsertibの第3相臨床試験が大規模に行われており、日本の先生方と非侵襲的なNASHの診断法の検討も進めています。
肝疾患以外の領域では、まずHIVに関して、米ギリアド社と日本たばこ産業(JT)のライセンス契約解消に伴い、今年1月からギリアドにおいて抗HIV薬6製品のプロモーション活動を開始しています。また、昨年12月に新規抗HIV薬(海外商品名:Biktarvy)を承認申請しましたが、これは欧米で高く評価されている配合剤で、1日1剤投与のレジメンです。これを日本で展開できれば、HIV感染症の治療を大きく改善できると考えています。HIVに関しては、日本の先生方とも協力し、治癒を目指した研究開発も進めています。
3つ目の重点領域は炎症疾患です。現在、JAK1阻害薬Filgotinibの第3相臨床試験が日本の施設も参加した形で進められており、2020年に関節リウマチ、2021年に潰瘍性大腸炎での承認取得を目指しています。

─最後に日本の医療従事者へのメッセージをお願いします。

ハーマンス 日本の先生方にはぜひ、ギリアドを信頼に足るパートナー、患者に革新的な医薬品を一緒に提供できるパートナーと考えていただきたいと思います。
情報開示、透明性が私たちの活動のベースですので、「ギリアド? 知らない」という先生方には積極的に情報を出していきたい。ぜひ私たちのことを知っていただき、「信頼できるパートナーだ。一緒に新薬を届けていこう」と思っていただければうれしく思います。
2019年にはラグビーW杯が日本で開催されますので、日本チームの活躍を期待していると伝えてください。ラグビーファンの先生も多いと思いますので。

─ラグビーをされるんですか。

ハーマンス かつてプレーヤーでした(笑)。

─それもお伝えします。ありがとうございました。

 

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