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【シリーズ・製薬企業はどう変わろうとしているのか─各社のキーパーソンに聞く(8)〈沢井製薬〉】「研究開発力」「安定供給力」「情報提供体制」3つの強みのさらなる強化で荒波を乗り切る

No.4935 (2018年11月24日発行) P.14

登録日: 2018-11-26

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政府が「骨太の方針」で数量シェアの目標値を掲げ、ジェネリック医薬品(後発医薬品)使用促進に本格的に乗り出したのが2007年。その翌年に沢井製薬社長に就任した澤井光郎氏は、ジェネリックの価値を社会に訴えるとともに、増大するニーズに対応 すべく社内体制の強化に努めてきた。「2020年9月までにジェネリックの使用割合80%」という政府目標達成も現実味を帯びる中、ジェネリック業界を牽引する沢井製薬は、今後も続く制度改革・環境変化にどう対応しようとしているのか。「80%達成後」も見据えた戦略を澤井社長に聞いた。


─使用割合80%の目標設定、価格帯集約をはじめとする薬価制度改革など、ジェネリックを巡る環境変化にどのように対応しているのでしょうか。

澤井 ジェネリックの品目が多く、価格にバラツキがあることが使用促進の障害になっているということで価格帯の集約化が進められていますが、この問題については、メーカーによって影響に差がありますので、業界団体として取り組まなければなりません。
ただ、沢井製薬としては、制度や環境がいろいろ変わっても、社の基本姿勢は変えてはならないし、変えるつもりもありません。
私たちの強みは3つあります。1つは研究開発力。ジェネリックは研究開発費を投じれば投じるほど、多くの品目を出すことができるので、沢井製薬はこの10年間、どこよりもたくさんの研究開発費を投じ、他社が参加しない、1社だけで上市するジェネリックも開発してきました。今年9月に発売したインフルエンザ治療薬「タミフル」(オセルタミビル)の後発品も、上市したのは沢井1社です。1社であれば価格帯集約の影響も大きく受けることはありません。
強みの2つ目は安定供給力です。市場がどんなに拡大しても安定供給できるよう、私たちは直近3年間で500億円もの設備投資をし、年間155億錠の生産能力を確保しました。3つ目は情報提供体制。約500名のMR(医薬情報担当者)と約50名の薬剤師で全国の病院・診療所、薬局に最新の情報をきちんとお届けできるのも大きなアドバンテージだと思っています。
これらの強みをさらに強化していけば、今後の制度改正や環境変化にも十分対応できると考えています。

「高品質」の人材育成で心の壁を突き破る

─新薬メーカーの間では、先発品メーカーから特許実施権を受けて発売するオーソライズド・ジェネリック(AG)の事業を加速させる動きがありますが、これにはどう対応していくお考えですか。

澤井 AGは基本的には長期収載品と一緒です。私たちのジェネリックは、その長期収載品が開発された時の技術よりも進んだ最新の技術で製剤化し、錠剤しかなければ口腔内崩壊錠(OD錠)をつくるなど、いろいろな付加価値を加えたものです。長期収載品にはない良さを生み出し、情報提供することが重要なのであって、AGを扱うことが重要ではないのです。

─OD錠については、メーカーによって溶け方が違うなどバラツキが大きいといわれます。

澤井 溶け方だけでなく、味・芳香も違います。OD錠は口の中で溶けるので、味が良くないと価値が半減します。沢井製薬は味覚センサーを使って味のバランスを整えて製剤化しています。芳香はストロベリー様やオレンジ様が多いのですが、高齢者が飲む薬(シロスタゾール)で抹茶様の芳香をつくったこともあります。



包装でも様々な工夫をしています。骨粗鬆症治療薬のミノドロン酸で、力を入れなくても折り曲げるだけで錠剤を取り出せる包装にしたことがありますが、これは患者さんに大変好評でした。こうした取り組みで患者さんや医療関係者の支持をいただければ、荒波の中でもなんとかやっていけると思っています。

─小誌の読者アンケートでは、製薬メーカーへの要望として「ジェネリックの情報をもっと提供してほしい」という声も寄せられています。情報提供活動では、どのようなところに力を入れていますか。

澤井 ジェネリックに対してはまだ「安かろう悪かろう」のイメージを強く持っている方がいます。その心の壁を突き破るためには、製品だけでなく、それを販売する人間も高品質でないといけない。そうでなければ「高品質です」と言っても伝わりません。その意味で人材育成には力を入れています。
ジェネリックの使用頻度が高くなるにつれ、副作用やトラブルへの対応に関する情報提供も重要になっていますので、24時間365日のコールセンター(医薬品情報センター)の機能なども充実させています。

沢井だからできる「ポリファーマシー対策」

─地域医療への貢献ではどのような取り組みをされていますか。

澤井 ジェネリックメーカーの中でどこよりも早く取り組んできたのは、高齢者のポリファーマシー(多剤併用)対策です。高齢者の薬物療法をテーマにした資材の作成、セミナー・勉強会の開催などを通じてポリファーマシー対策に資する情報を提供しています。
ポリファーマシー対策では、薬剤数を減らすための薬剤の切り替え、処方の提案が必要となりますので、約740の品目数、豊富なラインアップを持つ沢井製薬だからこそ積極的な支援ができると思っています。

─ジェネリックについてはメーカー数が多すぎる点が以前から問題視されています。

澤井 多いといわれていますが、取り扱う品目数が少ないメーカーが極端に多いのであって、300以上の品目を揃えて提供できているメーカーは実は6社しかありません(図参照)。きちんとラインアップを揃えているところにユーザーが集中するようになれば、企業数が多いという問題は解決できると思っています。

─最後に、現場の臨床医にこれだけは知っておいてほしいことがあれば。

澤井 日本のジェネリックの品質は世界一だということです。業界としては、その高品質のジェネリックを国内で製造できる状況はなんとしてもつくっていきたい。そのためには臨床医の先生方に、80%の数字にこだわることなく、Made in Japanのジェネリックを積極的に使っていただきたいと思っています。

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