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【シリーズ・製薬企業はどう変わろうとしているのか─各社のキーパーソンに聞く(7)〈Meiji Seika ファルマ〉】高品質で経済的な医薬品を提供し、患者本位の医療の実現に貢献していく

No.4931 (2018年10月27日発行) P.14

登録日: 2018-10-29

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薬価制度の抜本改革や臨床研究法制定、MRの訪問を制限する医療機関の増加などにより、医薬品販売・開発を巡る環境は大きく変化している。製薬企業の針路を探る本シリーズの第7回は、感染症や中枢神経系領域で存在感を増しているMeiji Seika ファルマの梅木祐仁営業本部長にインタビューを行った。新薬事業で培ったノウハウを生かしてジェネリック医薬品事業にも積極的に取り組み、開業医向けのラインナップを豊富に揃える製薬企業として、どのような道を歩もうとしているのか、話を聞いた。
【毎月最終週に掲載】



─厚生労働省がこのたび医療用医薬品の販売情報提供活動における適切性を担保するために、ガイドライン(GL)を策定・公表しましたが、どのように受け止めていますか。

梅木 GL策定に至る前段階として、厚労省が2016年度から始めた広告活動監視モニター制度があります。医療関係者が製薬企業の情報活動についてモニタリングし、不適切事例などを報告する仕組みですが、その中で具体例の提示もあり、情報活動のあり方の見直しや組織体制の構築など早くから対応に取り組んできました。例えば約3年前から「RMplus」(https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/medical/rmplus/)という医薬品検索ツールをMR(医薬情報担当者)が携帯するタブレットの中に実装し、適切な情報活動を行うよう努めています。

タブレット上で医薬品の相互作用をチェック

─どのようなツールなのでしょうか。

梅木 主に医薬品の相互作用を確認するツールです。高齢者は服用剤数が多いので、飲み合わせに注意が必要ですが、処方する先生方がすべての薬の相互作用を把握することは困難です。相互作用は併用禁忌・注意・なしの3段階で表示され、添付文書検索機能で使用上の注意を確認することもできます。

─とても便利な機能ですが、MRのタブレット上でしか検索できないのですか。

梅木 薬と飲食品の相互作用(図)と添付文書の検索機能の2つは、当社ホームページからアクセスできます。さらに、医薬品の相互作用と薬価検索機能についても先生方が自分のPCから検索できるように整備を進めているところです。



RMplusは臨床の現場でも役に立つツールだと思いますが、MRが薬の安全性に意識を持ちながら情報提供を行うことにつながるというメリットもあります。製薬企業に求められている、有効性と安全性のバランスがとれた情報活動を行う上で、こうしたMRの意識改革は大切な要素だと考えています。

十字の割線で低用量ニーズに対応

─新薬メーカーの中でも積極的にジェネリック事業に取り組んでいる印象です。競争の激しいジェネリック市場でどうシェアを高めていくのでしょうか。

梅木 1つは製剤へのこだわりです。例えば小児用の薬は患児が嫌がらずに服用してもらえるかがポイントになりますので、そこを重視して製剤の工夫をしています。また当社のジェネリックで主力の降圧剤「アムロジピン」に至っては、製剤改良を5回も行いました。患者さんが使いやすいものを目指して改良を重ねていく、これが新薬メーカーとしてジェネリックに参入した時からの変わらぬコンセプトです。

─具体的な改良点は。

梅木 抗うつ剤「パロキセチン明治」では、規格にない用量を服用できるように工夫しました。抗うつ剤市場は当社の重点領域であり、以前より先発品にない低用量規格が欲しいとのニーズを掴んでいました。そこで先発品にはない工夫として、細かな用量調整ができるよう錠剤に分割しやすい十字の割線を入れることでニーズに応え、パロキセチンの後発品ではトップシェアを獲得しました。

─競合品との差別化が難しいジェネリックの情報活動で、どのようなことを重視していますか。

梅木 例えば統合失調症薬の新薬「シクレスト」と「ジプレキサ」「エビリファイ」のジェネリックの3製品で数千例規模の市販後調査(PMS)を実施しています。すべての領域でできるわけではありませんが、当社のコアビジネスの感染症や中枢神経系領域では先発・後発品を問わずPMSを実施していく方針であり、これにより複数成分での比較が可能になります。結果の分析はこれからになりますが、興味深いデータが出るのではないかと期待しています。

─薬価が厳しいジェネリック事業に力を入れる狙いは何でしょうか。

梅木 製薬企業は画期的な新薬を開発することが大きな使命ですが、患者さんの立場から考えると、信頼できる品質のジェネリックを安定的に供給し続けることにも意義があります。
高齢化が進む中、多くの国民にとっては日常的に服用する薬が安く、常に手に入ることが大切だと思います。そこで薬価が引き下げられても低コストで製造できるような体制を構築するため、生産コストの安いインドの企業を子会社化しました。もちろん品質管理は徹底しますが、仮に最低薬価になったとしても医療機関や卸を含めた各ステークホルダーが利益を確保できるような仕組みをつくることが、ジェネリックの普及を促進する上で重要になると考えています。

感染症予防から治療までラインナップが揃う

─間もなくインフルエンザシーズンを迎えます。旧化血研から明治グループが引き継いだワクチン事業をどう展開していきますか。

梅木 当社の医薬品事業はペニシリンが源流です。感染症との闘いが会社の歴史であり、現在もコアビジネスとなっています。(化血研の主要事業を承継した)KMバイオロジクスが明治グループに加わったことで、予防から診断、治療までを一気通貫で行えるようになりました。このラインナップを生かした情報提供や処方提案を行っていきたいと考えています。

─約7割の品目が開業医向けということですが、医療提供者とのコミュニケーションや地域医療との関わりで重視していることを教えてください。

梅木 当社は1人のMRが先発品とジェネリック両方の情報提供を行っています。製品ラインナップを把握した1人のMRが患者さんごとに必要な情報を提供することが望ましいと考えているからです。
今後は地域医療でもジェネリックを中心としたフォーミュラリーの導入が進むことが予想されます。そのため各支店に医療制度とジェネリックの製品情報や薬価を熟知した「ジェネリック専任者」を配置し、地域との窓口として的確な情報提供を行えるような体制をとっています。有効で経済的なジェネリックの供給を通じて地域医療に貢献していきたいと考えています。

 

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