編著: | 大内憲明(東北大学名誉教授) |
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監修: | 精度管理マニュアル作成に関する委員会 |
判型: | B5判 |
頁数: | 212頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2018年07月24日 |
ISBN: | 978-4-7849-4215-2 |
版数: | 第6版増補 |
付録: | 電子版閲覧用シリアルナンバー(巻末綴じ込み) |
改訂第6版刊行にあたって
「がん対策基本法」では,科学的根拠に基づくがん医療の推進が求められている。マンモグラフィは複数のランダム化比較試験(RCT)により死亡率減少効果が証明された唯一の乳がん検診である。わが国でも平成12(2000)年度からマンモグラフィ検診が導入され,本書も版を重ねてきた。厚生労働省に設置された「がん検診のあり方に関する検討会」中間報告書〔平成27(2015)年9月〕では,「マンモグラフィによる検診を原則とする」ことが改めて提言されたところである。
一方で,若年・乳腺濃度の高い女性におけるマンモグラフィ検診の精度は十分ではなく,その限界が指摘されている。そこで,40歳代女性を対象に,がん対策のための戦略研究「超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験(J-START)」が平成18(2006)年度から開始された。そのプライマリエンドポイントが平成27年11月に公開され,マンモグラフィに超音波検査を併用した場合,マンモグラフィ単独検査に比べて感度およびがん発見率が優れているという結果が得られた。特に高濃度乳腺の者に対して将来的に超音波検査を追加する可能性が示されたわけであるが,死亡率減少効果はまだ認められていない。加えて超音波検査については,検診の実施体制,特異度が低下するといった不利益を最小化するための対策等について,引き続き検証していく必要がある。
本書の初版発行から15年以上が経過し,マンモグラフィによる乳がん検診はわが国において標準的な検診として定着した。旧来の視触診時代には検出不能であった非触知乳がんの発見が著しく増えたことから,診断プロセスである超音波ガイド下針生検やマンモトーム下生検,あるいはMRIやCTによる術前拡がり診断など,乳がん診療も格段の進歩を遂げている。撮影・読影では,アナログのフィルムスクリーンシステムからデジタル撮影・ビューア診断へと大きな変化が起こった。乳がん検診方法を適正な画像診断に切り替えることによって,かくも乳がん診療がレベルアップされたことは多くの医師および医療関係者の実感であろう。
進化し続ける乳がん検診,そのあり方は,科学技術の進歩のみでなく検診を受ける人の行動にも大きく影響を与える。本書が乳がん患者さんのQOL向上,および死亡率減少に結びつくことを確信している。
平成28年1月
【追記─第6版増補版刊行にあたって】
第6版在庫僅少を機に,現時点で最低限の変更を加えることとした。第8章「検診マンモグラムの読影と判定」“マンモグラム所見用紙の例”に追記し,“読影に関する基本講習プログラム案”を改めた。また,第15章「がん検診事業の推進と精度管理」の“検診実施体制を自己点検・評価するためのチェックリスト”を更新した。
マンモグラフィによる乳がん検診の課題として,高濃度乳房が挙げられる。現在,厚生労働行政推進調査事業費補助金厚生労働科学特別研究事業「乳がん検診における乳房の構成(高濃度乳房を含む)の適切な情報提供に資する研究」が行われており,その中間報告書「高濃度乳房について」(厚生労働省健康局長通知 健発0524第2号)が3月30日に発出されたところである〔http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000208392.pdf〕。乳がん検診の実施者におかれては,がん検診の利益・不利益や乳房の構成などについて正しく理解した上で,乳がん検診を適切に実施されることを願っている。
平成30年7月
編 者 大 内 憲 明
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。