株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

術後眼内炎パーフェクトマネジメント

術後眼内炎発症ゼロの手法を伝授!

定価:5,940円
(本体5,500円+税)

数量

カートに入れる

立ち読み

著者: 島田宏之(日本大学医学部眼科教授)
著者: 中静裕之(日本大学医学部眼科准教授)
判型: B5判
頁数: 104頁
装丁: カラー
発行日: 2017年01月09日
ISBN: 978-4-7849-6235-8
版数: 第1版
付録: -

術後眼内炎発症ゼロの手法を伝授!

●術後眼内炎は重篤な手術合併症であり、適切な治療を行っても最終視力は不良です。そのため医療訴訟の点からも対策が望まれています。

●抗菌薬を使用せずにポビドンヨードで「術野を一時的に無菌化」させる方法を紹介。

●簡便かつ安価に行え、多剤耐性菌にも有効で、耐性菌誘発の心配もない感染予防法〜治療法まで解説しています。

●「これまでに白内障手術、硝子体手術などに本法を用いてきましたが、眼内炎発症はなく、角膜障害などの眼合併症もありません」(著者談)

診療科: 眼科 眼科

目次

1章 術後眼内炎の発症メカニズム
1.結膜常在細菌サイクルと耐性菌
2.発症メカニズム

2章 臨床像と診断

3章 抗菌薬とヨード製剤

4章 予防対策
1.手洗い,消毒,ドレーピング
2.白内障
3.硝子体手術
4.硝子体内注射
5.バックル手術
6.LASIK
7.受水袋

5章 治 療
1.眼内炎の初期治療と硝子体手術
2.バックル感染
3.濾過胞感染

もっと見る

閉じる

序文


ヒトは出産に伴って微生物による汚染が始まり,これら微生物は,外界に接した皮膚,粘膜に定着します。これを常在細菌叢と呼びます。結膜常在細菌の多くは非病原性ですが,種類と頻度は地域により差があり,気候風土,衛生状態,抗菌薬の使用状況に影響されます。通常,結膜常在細菌は,侵入してきた病原菌を排除し発病をまねかないように働きます。非病原性である結膜常在細菌が結膜炎や眼内炎を起こすのは,1. 日和見感染,2. 常在細菌の耐性菌化や菌交代現象,3. 手術侵襲に伴う術後眼内炎です。

結膜と眼内とは免疫能が異なるので,結膜では問題とならない常在細菌が眼内では起炎菌となります。術後眼内炎は,起炎菌の種類や遺伝子型から,主に術眼の眼瞼・結膜常在細菌叢から細菌が眼内に迷入して生じるとされています。
健常人の結膜には常在細菌が90%で認められ,術前に抗菌点眼薬を3日間点眼しても60%程度にしか減菌できません。眼表面を生理食塩水で洗浄するという方法では,白内障,硝子体手術,硝子体内注射,いずれも常在細菌が眼内に迷入するというリスクがあります。また,ヨード系消毒液で眼瞼や結膜を洗浄すると,一瞬は無菌状態になりますが,少し経つと15%に増加し,手術終了時にも20%に検出されます。
抗菌薬を前房に投与したり,灌流液へ添加するという方法の有用性も報告されていますが,減菌に要する時間が15〜60分と長く,耐性菌,カンジダ,ウイルス,アカントアメーバには効果がありません。しかも,術前〜術後の長期にわたりニューキノロン系合成抗菌点眼薬を使用するために,グラム陽性菌耐性化率は30%以上にも認められます。このため抗菌薬を用いた感染予防方法には限界があります。常在細菌の耐性菌化や菌交代現象を起こさずに,眼表面の常在細菌を短時間で無菌化できれば,眼内への細菌迷入をきわめて少なくできると考えます。
そこで筆者らは,0.25%ポビドンヨードで眼手術の際に術野を繰り返し洗浄することで「短時間で術野を一時的に無菌化」させる方法を考案しました。ポビドンヨードは,安全濃度が確立されている消毒薬です。MRSA,多剤耐性菌,カンジダ,ウイルス,アカントアメーバに対する殺菌効果やバイオフィルム破壊効果もあることが示されています。しかも安価で,薬剤耐性がなく,殺菌に要する時間が15秒と短く,世界中で使用されているという利点もあります。

本書では,術後眼内炎の発症メカニズム,臨床像と診断,抗菌薬とヨード製剤,ポビドンヨードを用いた予防対策と治療を中心に解説しました。
術後眼内炎は重篤な手術合併症であり,各種の内眼手術後に生じうるものです。眼内炎全体の80%以上を占めると報告されており,適切な治療を行っても最終視力は不良です。本書は,術後眼内炎の予防・治療として有用な情報を,読者に提供できるものと確信します。

2016年 師走   島田宏之

もっと見る

閉じる

レビュー

「周術期感染症に対する科学的態度を貫き、多くの眼科医を迷信から解放する1冊」

岸 章治 前橋中央眼科院長/群馬大学名誉教授
術後眼内炎は眼科医にとって悪夢である。せっかく手術がうまくいっても、数日後に毛様充血と前房蓄膿が出れば、すべてが台無しになってしまう。我々は感染症を常に恐れている。角膜移植後にはステロイドを長期間点眼するが、感染予防と称して抗菌薬の点眼を併用するのは、その潜在意識の表れであろう。その結果は、高率な真菌症の発生である。「抗菌薬が結膜嚢を清潔にする」というのは根強い迷信である。病気のない結膜嚢に「予防的」に抗菌薬を点眼するのは、益がないばかりか常在菌のネットワークを壊し、耐性菌を誘導する害がある。抗VEGF薬の硝子体内注射ではそれが問題になっている。
島田宏之先生は、10年程前からポビドンヨードで術野を繰り返し洗浄する方法を開発し、学会や学術雑誌で啓蒙を続けている。本書のすごい点は、周術期感染症に対する科学的な態度が貫かれていることである。著者らは結膜嚢における常在菌の役割と薬剤による耐性菌の発現から説き起こし、手術によってそれらの菌の眼内侵入が避けられないことを実験的に示した。ゆえに感染を予防するには、術中に結膜嚢を無菌化すればよいということになる。抗菌薬の作用は細菌の細胞壁、蛋白、あるいはDNAの合成阻害であるが、この作用が発現するには15〜60分を要する。つまり、短時間の手術中に抗菌薬を点眼しても無駄なのである。術後眼内炎への硝子体手術で眼内灌流が15分で終わるとすると、灌流液に抗菌薬を入れるのはナンセンスということになる。それ以前に、抗菌薬が効かないこともある。
一方、ヨード剤は15〜30秒で殺菌効果を発現し、ほとんどすべての菌に有効である。しかも耐性菌を作らない。私は彼らの学会報告を聞いて、術後眼内炎に対しポビドンヨードで硝子体腔を灌流したことがある。効果は抜群で、翌日には前房がきれいになっていた。
本書により、多くの眼科医が迷信から解放され、術後眼内炎へのパーフェクトマネジメントが広く行われるようになることを期待したい。

もっと見る

閉じる

関連書籍

関連記事・論文

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top