株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

(2)家族性高コレステロール血症の 新しい主役PCSK9 [特集:家族性高コレステロール血症治療の可能性を探る]

No.4804 (2016年05月21日発行) P.32

野原 淳 (金沢大学大学院医薬保健学総合研究科先進的地域医療研究講座脂質研究室特任准教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-24

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 家族性高コレステロール血症(FH)における3番目の原因遺伝子として,PCSK9が発見された

    PCSK9はLDL受容体の分解を促進するため,機能亢進型変異では高LDLコレステロール血症をきたす

    PCSK9機能低下型変異ではLDLコレステロールが低下し,PCSK9欠損症ではLDLコレステロール低値以外は異常がみられていない

    PCSK9阻害薬は強力かつ安全性の高い医薬品として期待されている

    1. PCSK9の発見

    多くの分泌蛋白は前駆体として合成され,proprotein convertase(PC)ファミリーにより特定の部位で切断されることで生理活性を持つ成熟型となり,また一部の蛋白はPCによる切断で不活性型になる。対象となる前駆体には,ホルモン,成長因子,受容体,膜結合型転写因子(sterol regulatory element-binding protein:SREBP)などがあり,組織特異的なプロセシングが行われる。たとえば膵β細胞におけるプロインスリンではPC1/3およびPC2などの作用によりインスリンとC-ペプチドとなる。また,コレステロール合成制御で中心的役割を果たすSREBPは,PCファミリーのSKI-1/S1Pなどにより切断されて,その機能を果たしている。
    proprotein convertase subtilisin/kexin type 9(PCSK9)はPCファミリーの中でも最も新しい9番目のメンバーとして,2003年にSeidahら1)によって同定された。最初の論文では,肝再生および神経系分化に関連していることから,neural apoptosis regulated convertase 1(NARC-1)と名づけられたが,脂質代謝における役割は明確ではなかった。

    2. 家族性高コレステロール血症(FH)の3番目の原因遺伝子

    家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は高頻度の常染色体優性遺伝性疾患である。以前はホモ接合体がおよそ100万人に1人とされ,ヘテロ接合体は500人に1人とされてきたが,近年は遺伝子解析の進歩から一般人200~300人に1人程度とさらに高頻度の疾患であることが明らかとなっている2)
    FHのほとんどはLDL受容体(LDLR遺伝子)の変異によるもので3),一部はLDL受容体のリガンドであるアポリポ蛋白B-100(APOB遺伝子)の変異が原因となる。これらの遺伝子変異によるFHは近年それぞれ常染色体優性高コレステロール血症(autosomal dominant hypercholesterolemia:ADH)-1,ADH-2とも呼ばれるが,これらの遺伝子にリンクしない家系が存在することが知られていた。
    PCSK9の発見から間もなくして,Abifadel4)およびSeidah5)らは,LDLRおよびAPOBに遺伝子変異が見つからないフランス人家系などにおける連鎖解析から原因遺伝子を絞り込むことに成功し,PCSK9がFH(ADH-3)の3番目の原因遺伝子であることを突き止めた(図1)。

    残り4,854文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top