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(1)家族性高コレステロール血症の 新しい診断,病態,臨床update [特集:家族性高コレステロール血症治療の可能性を探る]

No.4804 (2016年05月21日発行) P.26

荒井秀典 (国立長寿医療研究センター副病院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-24

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  • 家族性高コレステロール血症(FH)は,高LDLコレステロール血症,早発性冠動脈疾患,腱・皮膚黄色腫を3主徴とする常染色体優性遺伝性疾患である

    FHはきわめて冠動脈疾患のリスクが高く,早期診断,厳格な治療が必要である

    FHヘテロ接合体の診断は,①LDLコレステロール180mg/dL以上,②腱・皮膚黄色腫,③2親等以内の血族のFHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴,のうち,2つ以上の項目を満たすこととする

    FHヘテロ接合体の治療には,スタチンを中心とした厳格な脂質管理が必要である

    FHホモ接合体および薬物療法抵抗性の重症FHヘテロ接合体は専門医へ紹介する

    1. 家族性高コレステロール血症(FH)の病態,臨床像

    家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は,①高低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール血症,②腱・皮膚黄色腫,③早発性冠動脈疾患,を3主徴とする常染色体優性遺伝性疾患である。FHはLDL受容体などLDL代謝に関わる遺伝子の異常により発症し,一方に遺伝子変異を有するものがヘテロ接合体,双方に変異を有するものがホモ接合体である。FHは生下時より高LDLコレステロール血症が持続することにより,きわめて冠動脈疾患のリスクが高い病態であり,その発症リスクは一般人の約10〜13倍と言われている。未治療の男性で30〜50歳,女性で50〜70歳の間に心筋梗塞,狭心症などの冠動脈疾患を発症することが多い1)。動脈硬化性疾患の合併に関しては,脳卒中,末梢動脈疾患に比べて冠動脈疾患の合併が圧倒的に多い(図1)2)。当然,血中のLDLコレステロール濃度に依存して,冠動脈疾患の合併率が高くなるが,ほかの危険因子の存在によっても,冠動脈疾患のリスクは高くなる。この点は非FHとまったく同様であり,LDLコレステロールの管理とともに,喫煙習慣,高血圧,糖尿病などの危険因子の管理は,ベースラインのリスクが高いだけにきわめて重要である。したがって,早期診断・早期治療が重要である。
    日本人においても他国と同様に200~500人に1人の割合でFHヘテロ接合体が存在し,約30万人の患者がいると推定されるが,最近デンマークより137人に1人との報告がなされている3)。したがって,FHは実地医家において最もよく遭遇する心血管疾患リスクの高い遺伝疾患の1つであるが,現状ではFHへテロ接合体患者は適切な診断と最適な治療を受けていないことが多く,その家族の診断と治療も十分ではない。
    FHの臨床診断で重要な身体所見は腱黄色腫,皮膚黄色腫の存在である。ヘテロ接合体に比べ,ホモ接合体ではさらに黄色腫は著明となる。黄色腫は,皮膚では肘・膝関節の伸側,手首,臀部など機械的刺激が加わる部位に多く発生する。腱黄色腫はアキレス腱肥厚として現れることが多く,視診のみでも診断できることがあるが,触診が重要である。黄色腫がなくてもFHは否定できない。角膜輪もFHに特徴的な所見であるが,その出現頻度は高くなく,3割程度である。

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