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インフルエンザワクチンのウイルス株と流行株の違いはなぜ生じるか?【鶏卵内で効率よく増殖させるためにHAの構造を変化させようとした際に起こる】

No.4865 (2017年07月22日発行) P.66

渡邉真治 (国立感染症研究所インフルエンザウイルス 研究センター第一室室長)

登録日: 2017-07-19

最終更新日: 2017-07-18

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  • 2017年1月中旬から2月21日まで,当介護老人保健施設でインフルエンザA型(香港型のようでした)が猛威を振るいました。ワクチン接種者がほとんどなのに不可思議な現象でした。香港型はワクチン生産過程の鶏卵中で遺伝子変異を起こすという話を聞きましたが,本当なのでしょうか。

    (福岡県 T)


    【回答】

    インフルエンザウイルスの分離増殖培養には鶏卵が用いられてきた歴史的な背景から,現行のインフルエンザワクチンも,臨床検体から鶏卵で分離されたウイルス株を用いて生産されます。

    ウイルス表面にあるヘマグルチニン(hemagglutinin:HA)と細胞表面に存在するレセプターとが結合することでウイルス感染が始まりますが,鶏卵細胞とヒトの呼吸器上皮細胞では,そのレセプターの構造が微妙に違うため,ヒトで流行している季節性インフルエンザウイルスが鶏卵細胞で効率よく増殖するためには,HAの構造を変化させる必要があります。すなわち遺伝子変異によりアミノ酸変異を起こす必要があります。この変化の結果,鶏卵で増殖させたウイルスと実際にヒトの間で流行しているウイルス(流行株)では,その抗原性が変わってしまうことがあります。

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