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大動脈弓部置換術における選択的脳分離灌流法の灌流条件・至適温度【遠位吻合の難易度によって直腸温25~28℃とし,500~600mL/分で灌流】

No.4855 (2017年05月13日発行) P.55

國原 孝 (心臓血管研究所付属病院心臓血管外科部長)

椎谷紀彦 (浜松医科大学第一外科教授)

登録日: 2017-05-11

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  • 大動脈弓部置換術の成績は近年非常に安定してきていますが,その一因として脳保護法の発達が挙げられると思います。とりわけ,わが国では選択的脳分離灌流法が積極的に用いられてきたのが奏効したのではないかと推察しています。しかしその灌流条件,至適温度については,いまだ施設間で統一した見解が得られていないのではないでしょうか。
    この分野で長い経験を有し,脳保護法について造詣が深い浜松医科大学・椎谷紀彦先生に,脳保護法の至適条件についてご教示頂ければ幸いです。

    【質問者】

    國原 孝 心臓血管研究所付属病院心臓血管外科部長

    【回答】

    選択的脳灌流法の至適灌流条件は,1980年代にわが国で確立されました。現在でも「低体温では低流量・低圧灌流が安全」というコンセプトは健在です。中島伸之先生は直腸温25℃で500mL/分,浅側頭動脈圧40~60mmHgが至適であるとし,常温ないし軽度低体温で840~1400mL/分,60~140mmHgの高流量高灌流圧では高率に脳障害が発生し,中等度低体温で灌流圧<100mm Hgとすることで若干改善した,と報告しています。数井暉久先生は直腸温22℃,10mL/kg/分,右橈骨動脈圧50~70mmHgが至適としていますが,後の実験では,25℃では正常流量の50%以上,灌流圧40~70mmHgで誘発電位が回復したと報告しています。

    正常脳血流は750mL/分程度であり,常温では50~170mmHgの範囲でautoregulationが働きます。20℃になると,この範囲は30~100mmHgと低下します。またautoregulationは12℃未満やpH-stat管理では消失します。autoregulationが存在する脳,心,腎などの臓器は,高圧・過灌流に弱いことが知られていますから,「低体温領域では低圧・低流量が安全」というコンセプトは正しいです。また,北米の体外循環のevidence-based reviewでもα-stat管理が推奨されています。

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