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広島県三次市におけるマダニ咬症重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の症例を含めて [学術論文]

No.4840 (2017年01月28日発行) P.44

津島弘文 (津島医院院長)

重信和也 (重信医院院長)

後川 潤 (川崎医科大学微生物学教室)

沖野哲也 (川崎医科大学微生物学教室講師)

登録日: 2017-01-30

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  • 広島県三次市の2つの医療機関において,2015年1~12月の1年間に42例のマダニ咬症を経験した。咬症部位は四肢が多く,時期としては6〜8月に多くみられた。マダニ受傷推定機会は畑仕事や草刈り・草取りが多い。咬着したマダニの種類はタカサゴキララマダニ,フタトゲチマダニ,キチマダニの3種類で,タカサゴキララマダニとフタトゲチマダニが多数を占めた。マダニ咬症例のうち,1例でマダニ媒介性感染症のひとつである重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を発症した。

    1. マダニ咬症例─罹患部位,症状など

    広島県三次市の2つの医療機関において,2015年1~12月の1年間でマダニ咬着を主訴に受診した症例を42例経験した。月別の受診患者数は図1の通りで,6〜8月が全症例の約74%であった。受診患者の年齢は2~90歳で,平均年齢は70.4歳と,60歳以上が全症例の約83%を占めた。受診患者の性別は女性が26例,男性が16例で女性のほうが多かった。


    今回経験した42例のうち,3例は2箇所に咬着されたため,罹患部位は計45例となるが,身体部位別には下肢17例,上肢14例,躯幹12例(臍部1例,陰嚢1例含む),頭頸部2例(耳介を含む)であった(図2)。四肢,特に下肢が最も多い罹患部位であり,特異な部位として耳介,陰嚢,臍部への咬着がみられた。患者の問診による受傷推定機会は畑仕事20例,草刈り・草取り12例,山仕事4例が主で,その他は墓掃除,山歩きが各2例,農園作業,家屋内においてペットを介したものと思われる症例が各1例あった。咬着症例患者の受診時の症状として,咬着部周囲の小紅斑が大多数の症例でみられた。全身の発疹やライム病に際して生じる遊走性紅斑は,重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)を発症した症例でみられた咬着部周囲における広範囲の紅斑を除き,他の症例にはみられなかった。発熱を認めたのは,SFTSを発症したこの1例のみで,胃腸症状などの他の症状は全例でみられなかった。マダニの除去は,ピンセットやマダニ除去用ツールであるティックツイスターを用いて,受診時に機械的に行った。  
    今回の結果と,我々が2013年4月~2014年8月に経験したマダニ咬症例1)2)を比較したところ,受診月は5〜8月に多く,どちらも大差はみられなかった。性別も同様に女性の受診者数が多く,咬着部位も四肢に多くみられた。受傷推定機会も草刈り・草取り,畑仕事,山仕事などで,今回の結果は既報とほぼ同様の結果であった。

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