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(2)抗菌薬開発の経緯と今後の展望 [特集:多剤耐性菌を巡る諸問題]

No.4703 (2014年06月14日発行) P.30

八木澤守正 (慶應義塾大学薬学部共同研究員)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-30

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  • 日本は抗菌薬開発において主導的な役割を果たし,標準抗菌薬と目される優れた抗菌薬を世界に供給してきた

    昨今は日本における抗菌薬開発が停滞している

    欧米における多剤耐性菌による深刻な状況は,まだ日本には及んでいない

    国外から厄介な多剤耐性菌感染症が持ち込まれる可能性は大きい

    国内でも耐性菌感染症に有効な新規抗菌薬の開発を促進する必要がある

    1. 抗菌薬開発の経緯と臨床使用の現状

    1 抗菌薬の臨床使用

    日本の臨床現場では,一般病原細菌による感染症に対して103品目の抗菌薬が使用されているが,その半数に近い48品目はβ-ラクタム系であり,次いでフルオロキノロン系が13品目,アミノグリコシド系が9品目,マクロライド系が7品目,テトラサイクリン系が6品目などとなっている。β-ラクタム系と一括するが,その内訳は注射用セフェム系が16品目,経口用セフェム系が12品目,ペニシリン系が7品目,カルバペネム系が6品目,β-ラクタマーゼ阻害薬が4品目など多種多様である。それらの抗菌薬が,好気性のグラム陽性球菌からグラム陰性桿菌,嫌気性菌やリケッチア属・クラミジア属・マイコプラズマ属などの非定型細菌に至るまでの50属・種以上の一般病原細菌が起炎する皮膚科・外科・呼吸器科・泌尿器科・産婦人科・小児科・眼科・耳鼻咽喉科・口腔外科など各科領域の70疾患以上の感染症に対して,注射・内服・外用製剤として治療に用いられている(表1)。
    また,結核を適応症とする10品目の抗結核薬も用いられている。日本においては,このように多種多様な抗菌薬を,承認適応に従う限りは保険診療の範囲内で単独または併用で自由に使用することが可能であるので,感染症の化学療法における最先進国と言うことができる。
    世界の先進国の中で,10品目以上の注射用または経口用のセフェム系やフルオロキノロン系,5品目以上のカルバペネム系やアミノグリコシド系の抗菌薬が使用できる国は日本だけであり,上記のような多品目の抗菌薬使用の是非については様々な論議が行われてきている。極端な否定論では,同系の抗菌薬には有意な相違はないと判断して,乗用車のモデルチェンジと同様であると断言する識者も存在する。
    しかしながら,実際の臨床の現場で,きわめて複雑で難治性の感染症の治療に取り組んできている専門医は個々の抗菌薬の特徴を熟知しており,患者に応じた適切な抗菌薬の選択をしている。

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