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センチネルリンパ節生検術 【SLN転移陰性例でのALNDの省略はガイドラインでも推奨】

No.4783 (2015年12月26日発行) P.50

竹内 恵 (京都大学乳腺外科)

戸井雅和 (京都大学乳腺外科教授)

登録日: 2015-12-26

最終更新日: 2016-10-26

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センチネルリンパ節生検術(SLNB)は,乳癌の腋窩リンパ節転移を組織学的に診断するための標準手術となっている。センチネルリンパ節(SLN)の同定方法として,ラジオアイソトープ(RI)法,色素法,蛍光法があり,筆者らの施設ではRI法と蛍光法を行っている。
蛍光法はインドシアニングリーンを皮下注射し,PDE赤外線カメラを用いて観察する。深さ1cmまでは観察可能であり,乳房から腋窩に向かうリンパ流の経路を確認し,深部へ流入するところからは皮膚を圧迫することで,SLNへの集積を確認することができる(文献1)。
SLNが転移陰性であった場合,腋窩リンパ節郭清術(ALND)を省略すると術後後遺症が減少し,生存期間および局所再発に差がないことが臨床試験で示され,ガイドラインでも推奨されている(文献2)。また,乳房温存手術において,術後放射線治療や標準的薬物療法も行う場合,SLNに1~2個転移を認めた症例でALNDを省略しても生存率,無再発生存率,局所再発率に差はないという臨床試験の結果もあり,SLNに転移を認めてもALNDの追加の必要性については慎重に検討しなければならない(文献3)。さらに,術前化学療法を行う症例では,画像上リンパ節転移がないと判断した場合,化学療法後のSLNBは許容できると考えられている。

【文献】


1) Kitai T, et al:Breast Cancer. 2005;12(3):211-5.
2) 日本乳癌学会, 編:科学的根拠に基づく 乳癌診療ガイドライン1 治療編 2015年度版. 第3版. 金原出版,2015.
3) Giuliano AE, et al:Ann Surg. 2010;252(3):426-32;discussion 432-3.

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