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胸腺上皮性腫瘍の治療

No.4763 (2015年08月08日発行) P.52

吉田成利 (千葉大学呼吸器外科准教授)

吉野一郎 (千葉大学呼吸器病態外科教授)

登録日: 2015-08-08

最終更新日: 2016-10-26

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胸腺上皮性腫瘍は胸腺腫,胸腺癌,胸腺神経内分泌腫瘍に分類され,日本胸部外科学会の全国集計(2012年)(文献1)では,胸腺上皮性腫瘍2151例中,胸腺腫が1842例(85.6%)と最も多い。臨床病期は正岡分類が国際的に汎用されているが,ITMIG(International Thymic Malignancy Interest Group)において,より臨床に即したMasaoka-Koga分類が提唱されている(文献2)。最近,わが国を含めた国際的な症例データベースをもとにしたTNM分類の構築が検討されている。
胸腺腫の治療は外科切除が第一選択である。原則は完全切除であるが,亜全摘であっても生存延長に意義があると考えられている。また,胸腔内に限局する再発巣の可及的切除は予後改善が期待される。一方,胸腺癌における外科治療は完全切除のみ予後に寄与する。アプローチは従来の胸骨縦切開のほか,胸腔鏡手術やda Vinciによる切除が行われる。
完全切除が困難な胸腺腫は化学療法を行うが,ADOC(シスプラチン+ドキソルビシン+シクロホスファミド+ビンクリスチン),CAMP(シスプラチン+ドキソルビシン+メチルプレドニゾロン)やカルボプラチン+パクリタキセルが効果的である。術後補助療法の化学療法や放射線療法は確立していない。胸腺癌や胸腺神経内分泌腫瘍に対する化学療法は確立しておらず,胸腺腫に準じた治療が妥当とされている。近年,胸腺上皮性腫瘍に対する分子標的治療薬の臨床試験も行われている。

【文献】


1) Masuda M, et al:Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2014;62(12):734-64.
2) Detterbeck FC, et al:J Thorac Oncol. 2014;9(9 Suppl 2):S65-72.

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