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バルサルタン論文不正問題でノバ社元社員が逮捕:虚偽宣伝に加担した学会幹部は国民に謝罪を─厚労省検討委員・桑島巖氏に聞く

No.4704 (2014年06月21日発行) P.14

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-29

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  • 東京地検は11日、ノバルティスファーマ元社員の白橋伸雄容疑者を薬事法違反(誇大広告)の疑いで逮捕した。Kyoto Heart Studyのデータ操作が容疑だ。循環器診療の専門家でこの問題に詳しい桑島巌氏に聞いた。

    ─桑島先生が委員を務めた厚労省「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」では、不正論文に基づくバルサルタン(商品名=ディオバン)の広告が誇大広告に該当するおそれがあるとして、薬事法上の違法性を検証するよう国に求めた。今回の逮捕をどのように受け止めているか。

    厚労省検討委員会には何ら強制力がなく、事実究明が十分にはできなかったので、検討委員会がまとめた報告書では「立入検査等の権限を有する者による詳細な実態解明」を求めた。しかし逮捕にまで至ったことは正直言って驚いている。

    検察はKyoto Heart Studyの主論文ではなく「Clinical and Experimental Hypertension」という雑誌に載った追加論文を逮捕の容疑とした。09年に発表された主論文は薬事法の時効3年に該当するため、11年の追加解析を逮捕容疑にしたことに検察の執念を感じるし、この不正をよく見つけたなと感心している。

    再発防止策の策定には事実究明が必要

    ─厚労省検討委員会で桑島先生は、白橋容疑者を含めて、ノバ社や京都府立医大、慈恵医大、千葉大、滋賀医大、名大、大阪市大の関係者にヒアリングを実施した。その時の印象は。

    それぞれの主張に齟齬があり、らちが明かないと思った。大学も白橋容疑者もデータ操作を否定し、ノバ社は臨床試験に関与していないという立場を崩さない。そこで私が「白橋さんが関係大学に出張した時の出張費はどこから出ているのか」と聞くと、会社が出していると答える。それはつまり、会社の仕事として臨床試験に関わっていたということ。しかし調査権限がなく、事実究明に積極的ではない委員も多かったため、矛盾点を追及できなかった。しかし、私は事実究明なしには再発防止策を策定できないと考え、刑事告発を委員会で提案した。私の考えに賛同した委員は少数だったが、厚労省が採り入れ、1月に厚労省が告発状を提出するに至った。

    今回は白橋容疑者だけが逮捕されたが、仮に彼がデータ操作をしていたとしても、彼個人には何のメリットもない。今回の逮捕を突破口に、この問題に関して全容解明が進むことを期待している。

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